ビタミンC誘導体によるメラニン生成抑制作用を高める植物素材「セージエキス」
小林製薬株式会社は6月11日、ビタミンC誘導体(L-アスコルビン酸2-グルコシド)およびセージエキスが、紫外線や加齢に伴う慢性炎症で生成される炎症性物質(GM-CSF)の発現を抑制することにより、シミの原因となるメラニンの生成を防ぐ作用を発見したと発表した。この研究は、同社と近畿大学薬学総合研究所の森山博由准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS One」に掲載されている。

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シミの原因であるメラニンの生成経路は非常に複雑である。皮膚に紫外線があたると、表皮細胞からさまざまな情報伝達物質が分泌され、メラニン生成の引き金となる。命令を受け取った色素細胞はメラニンを生成し、メラニン集合体(メラノソーム)として表皮細胞へと受け渡す。このメラノソームが分解・排出されずに表皮内に蓄積するとシミとなって現れる。このようにメラニン生成の過程は複雑であり、どこか1か所を阻害するだけではシミを完全に抑制することはできない。
ビタミンC誘導体は、シミを防ぐ医薬部外品の有効成分として広く用いられている。この成分は、色素細胞に対して直接的に作用し、メラニン生成を抑制することでシミを防ぐ効果が知られている。同社は長年のシミ研究を進める中で、ビタミンC誘導体によるメラニン生成の抑制作用を高める素材として植物素材「セージエキス」を見出した。
ビタミンC誘導体+セージエキス、メラニン生成を促す炎症性物質に着目し検討
今回の研究では、シミに対する作用があまり知られていなかったセージエキスと、シミ対策成分「ビタミンC誘導体」を組み合わせた新たなシミ対策アプローチを探索した。特に、メラニン生成を促す炎症性物質に着目した検討を行った。
メラニン生成を促す炎症性物質遺伝子CSF2減
紫外線のダメージを受けた表皮細胞で産生される炎症性物質の量を調べたところ、セージエキスを添加することによって、メラニン生成を促す炎症性物質(GM-CSF:granulocyte macrophage colony stimulating factor, 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)の遺伝子であるCSF2の発現量が減少していた。ビタミンC誘導体を添加した場合においても同様の作用が確認された。表皮細胞における炎症性物質の産生抑制という作用はこれまで知られておらず、ビタミンC誘導体の新たな機能を発見した。
GM-CSFは、CSF2遺伝子から産生される炎症性物質。表皮細胞から産生されると、メラニン生成を促すことが報告されている。また、老化に伴う慢性炎症の際に生み出されるSASP因子としても知られている。肌の慢性炎症状態が継続することで、色素細胞を刺激し、シミやくすみを悪化させると考えられる。また、コラーゲンやエラスチンなどの分解を引き起こすことで、肌のハリや弾力が失われ、しわやたるみの原因になると言われている。つまり、慢性炎症の一因であるGM-CSFの発現量を抑えることで、シミ対策効果が向上する可能性がある。
ビタミンC誘導体+セージエキス、メラニン生成減
表皮細胞から放出される炎症性物質を介して、色素細胞におけるメラニン生成を抑制するのか検証するため、表皮細胞と色素細胞を同時に培養する間接培養系を確立し、ビタミンC誘導体、セージエキスの間接的なメラニン生成抑制作用を検証した。コントロールの細胞では、表皮細胞に紫外線を照射することで、炎症性物質が放出され、間接的に共培養した色素細胞におけるメラニン生成量が増加していた。その一方で、ビタミンC誘導体、セージエキスを添加した場合は、色素細胞におけるメラニン生成が減少していた。
慢性炎症を防ぐビタミンC誘導体、幅広い年齢層のシミ対策に有効である可能性
今回の研究では、ビタミンC誘導体およびセージエキスが、紫外線ダメージを受けた表皮細胞に作用し、メラニン生成を促す炎症性物質であるGM-CSFの産生を抑制することを見出した。表皮細胞における炎症性物質の量を減らすことで、色素細胞におけるメラニン生成を間接的に抑制し、シミの形成に対して効果を発揮していると考えられる。GM-CSFは老化状態で産生量が増加するSASP因子としても知られている。色素細胞と、その周辺環境にアプローチできるビタミンC誘導体は、シミに悩む幅広い年齢層の方々に有効であると考えられる。本研究成果を今後の研究や製品開発に応用していく、と研究グループは述べている。
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・小林製薬株式会社 プレスリリース


