加熱式たばこからニコチンとタールを取り除いたガス相抽出物の健康への影響を調査

横浜市立大学は10月30日、従来のたばこ（紙巻きたばこ）と加熱式たばこからニコチンとタールを取り除いた成分（ガス相抽出物）を抽出し、ヒトの細胞に対する毒性を比較した研究の成果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環制御医学の梅村将就准教授、長尾景充助手、永迫茜助手らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Physiological Sciences」に掲載されている。

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加熱式たばこは従来のたばこと異なり、より安全なデバイスとして近年若者を中心に急速に広まっている。しかし、その安全性については十分な研究が行われておらず、健康への影響が懸念されている。加熱式たばこを吸った日本人若年男性が急性好酸球性肺炎を発症し、人工心肺を要したという報告もある。加熱式たばこはニコチンが少ないとされているが、たばこの煙には5,000種類以上の化学物質があり、中には加熱式たばこにより多く含まれる物質も存在する。研究グループは加熱式たばこから、ニコチンとタールを取り除いたガス相抽出物がどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的に検討を行った。

加熱式たばこ、高濃度では細胞死を引き起こす

ヒト口腔扁平上皮がん細胞を用いて、加熱式たばこと従来のたばこの煙が細胞に与える影響を比較した。両者の煙を細胞培養液中に抽出し、細胞の生存率、アポトーシス（細胞死）、Ca²⁺シグナル伝達経路の変化および活性酸素種を観察した。その結果、加熱式たばこは低濃度でがん細胞増殖を促進させる可能性があり、高濃度では細胞死を引き起こすことが明らかになった。

加熱式たばこの毒性に、紙巻きたばこ同様CaMKK2を介した活性酸素産生が関与

さらに、加熱式たばこのガス相抽出物の毒性について研究したところ、加熱式たばこのガス相抽出物の刺激により細胞内Ca²⁺濃度が上昇し、細胞内Ca²⁺シグナル、特にCaMKK2（Calcium/calmodulin-dependent protein kinase kinase 2）が活性化され、その結果、活性酸素が生成されることでアポトーシスが引き起こされることが示された。加熱式たばこにおいても、従来のたばこにおいても、CaMKK2を介した活性酸素産生が毒性の一因であることを、初めて突き止めた。

「このように、加熱式たばこも、従来のたばこと同様に健康被害のリスクがある可能性が示唆された。今後、加熱式たばこががん細胞を増やしたメカニズムについてのさらなる研究が求められる」と、研究グループは述べている。（QLifePro編集部）