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骨に匹敵する柔らかさを有する新規生体用金属材料の開発に成功-東北大ほか

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2022年05月20日 PM12:00

従来のインプラント、骨よりはるかに高いヤング率を示すという課題

東北大学は5月19日、今まで実現できなかった、骨との高い力学的親和性と耐摩耗性を両立させたコバルトクロム(CoCr)系生体用金属材料を開発したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科博士後期課程の大平拓実氏(研究当時)、許皛助教らと、同大金属材料研究所、日本原子力研究開発機構J-PARCセンター、チェコ科学アカデミーとの共同研究によるもの。研究成果は、「Advanced Materials」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

超高齢社会に突入した現代社会では、病気やけがによる骨や関節疾患者の増加が問題となっており、生体内に埋入して治療に用いられる、インプラントと呼ばれる生体材料の需要が高まっている。金属材料は強度・延性のバランスが優れ、力学的信頼性も高いため、大きな荷重を支える必要のある骨機能代替インプラントとして幅広く応用されている。

インプラントには、優れた耐摩耗性と耐食性が要求される。しかし、高い強度を有する金属材料であるが故に、しなやかな生体骨とは力学的特性が大きく異なることが一般的であり、特にヤング率が高いことが問題となる。ヤング率とは、材料を引張もしくは圧縮で弾性変形させたときの、変形ひずみに対する応力の比のこと。一般に、高分子など柔らかい材料では低いヤング率を示すが、金属やセラミックスなどの硬い材料では高いヤング率を示す。インプラントが骨よりはるかに高いヤング率を示すと、力のほとんどはインプラントにかかり、周囲の骨に伝わらないため(この現象を応力遮蔽と呼ぶ)、骨が萎縮し、骨密度の低下や骨折リスクの上昇につながる。そのため、近年、生体骨と同等の低いヤング率を持つ新規金属材料の開発が求められている。

臨床応用されているTi合金、NiTi合金などにも問題

臨床では、生体用金属材料として安価なステンレス鋼のSUS316L、耐摩耗性の優れたCoCr合金、ヤング率が比較的低いTi(チタン)合金が最も利用されている。しかし、ステンレス鋼と既存のCoCr合金のヤング率は生体骨の約10倍もの高い値を示す。低いヤング率のTi合金もあるが生体骨より高く、さらに耐摩耗性が低い問題がある。現状、ヤング率が生体骨と同程度で、優れた耐摩耗性と耐食性を兼ね備えた金属材料はほとんどない。特に、重要な力学的特性である低ヤング率は高い耐摩耗性とは一般にトレードオフの関係にあり、これらの特性を両立させた新規合金の開発はこれまで困難だった。

一方、最先端医療で使用される超弾性合金の中では、約8%の超弾性ひずみを示すNiTi(ニッケルチタン)合金が最も使用されている。しかし、NiTi合金はNi(ニッケル)元素の割合が高く、Niを原因とするアレルギー反応を引き起こす懸念がある。そのため、Niを含まないTi系超弾性合金が開発されてきたが、その超弾性ひずみはNiTi合金の半分程度に留まっている。

開発したCo-Cr-Al-Si合金、生体骨と同様の10〜30GPaと極めて低いヤング率

今回研究グループは、コバルト(58〜59質量%、以下同様)とクロム(33〜34%)を主成分とし、アルミニウムとシリコン(合計8%)を添加したCo-Cr-Al-Si合金を新たに開発した。既存の面心立方構造であるCoCr合金に対し、開発したCoCr合金は体心立方構造を有し、極めて高い弾性異方性を示すため、<100>方向を有する単結晶を用いることで、生体骨と同様の10〜30GPaと極めて低いヤング率を実現した。

一般的な生体用金属材料におけるヤング率と耐摩耗性はトレードオフの関係にあるが、同CoCr合金は既存CoCr合金に匹敵する高い耐摩耗性を有しながら、ヤング率は極めて低く、従来のトレードオフの関係を大きく打ち破った。さらに、同CoCr合金は、1.65%もの大きな変形に対して、1000万回以上の疲労寿命を示し、低いヤング率も維持されることから、次世代生体用金属材料として大いに期待される。

また、NiTi超弾性合金は約8%の超弾性ひずみを示したが、同CoCr合金はその2倍以上である17%もの大きい超弾性ひずみを示したため、多機能性生体材料としての応用も考えられる。

、歯科インプラント、ステントなどへの応用に期待

研究により、特に低いヤング率、高い耐食性、高い耐摩耗性および優れた超弾性特性の4拍子そろった生体材料を初めて実現した。「低いヤング率、高い耐食性と耐摩耗性を生かすことで、人工関節、ボーンプレート、歯科インプラントおよび脊髄固定器具などへの応用が考えられる。さらに、優れた超弾性特性を利用することで、ステントやガイドワイヤーなどへの応用も期待される」と、研究グループは述べている。

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