抗原の皮膚暴露がIgE感作を促進の可能性、その分子メカニズムは不明だった
東京大学は7月3日、皮膚において産生されるプロスタグランジンD2(PGD2)が、免疫細胞のCRTH2受容体を刺激して、アレルギーを発症するIgE抗体の産生(感作)を促進する仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。

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近年、アトピー性皮膚炎のある乳児が食物アレルギーを発症しやすいことが疫学的に示され、皮膚からの抗原暴露がIgE抗体産生(感作)を促進する可能性が注目されている。しかし、その分子メカニズムは不明だった。
抗原<皮膚暴露<PGD2増加<IgE産生<アレルギー発症、食物アレルギーモデルマウスで
今回の研究では、食物アレルギーモデルマウスを用い、皮膚に卵白アルブミン(OVA)を投与した。その結果、皮膚局所でPGD2が増加し、同時にIgE抗体の産生も増加することが確認された。免疫染色や質量分析により、皮膚やリンパ節の抗原提示細胞がPGD2を産生していることも証明された。
PGD2受容体欠損や受容体阻害剤の皮膚投与で、アレルギー症状を抑制
また、PGD2の受容体であるCRTH2を欠損させたマウスではIgEの産生とアレルギー症状が有意に低下。一方、CRTH2を活性化する薬を投与すると、IgE産生が促進された。CRTH2シグナルが抗原提示細胞の活性化を促し、IgE産生を誘導していることが示唆される。
加えて、CRTH2阻害薬の皮膚投与によりIgEの産生とアレルギー症状の抑制が確認され、同経路の薬理学的な介入が有効であることも明らかになった。このように、PGD2とCRTH2による皮膚感作のメカニズムを明らかにした同研究は、乳幼児やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱い、もしくはバリアが破綻して、抗原が入りやすくなった状態に対する新たなアレルギー予防法の開発に寄与することが期待される。
アレルギー高リスク集団への早期介入、有効性を示唆する結果
同研究グループはこれまでに、尿に排泄されるPGD2などの代謝物が皮膚炎や食物アレルギーのバイオマーカーとなることを明らかにしている。これらのバイオマーカーを見ながら、皮膚を守り、アレルギーを予防・管理できるシステムの構築を目指している。また、同研究成果は、食物アレルギーの新たな予防・治療法の開発に貢献する重要な成果であり、乳児期に皮膚炎を持つ子どもなど、アレルギーリスクの高い集団への早期介入の有効性を示唆している、と研究グループは述べている。
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