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腕時計型ウェアラブルデバイスを用いた睡眠判定アルゴリズム「ACCEL」開発-東大ほか

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2022年01月26日 AM11:15

従来手法の課題「睡眠状態判定で特異度が高くない」

東京大学は1月20日、腕時計型のウェアラブルデバイス等を用いて計測することができる腕の動きの情報から、その人が眠っているのか、起きているのかを正確に判定する手法「ACCEL(ACceleration-based Classification and Estimation of Long-term sleep–wake cyclesの略称)」を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学分野の上田泰己教授(理化学研究所生命機能科学研究センター合成生物学研究チーム・チームリーダー兼任)、大出晃士講師、史蕭逸助教、情報理工学系研究科システム情報学専攻システムズ薬理学研究室の香取真知子修士課程2年生(研究当時)、工学部計数工学科システム情報工学コースの三井健太郎学部4年生(研究当時)、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社技術戦略室の高梨伸氏、大口諒氏、商品設計部門・商品設計部・設計3課の青木大輔氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「iScience」に掲載されている。


画像はリリースより

近年、ウェアラブルデバイスを用いた人の行動データの取得が盛んに行われ、さまざまな健康管理に活用されている。睡眠覚醒リズムの乱れは、さまざまな疾患の原因になりうること、また、心身の不調を早期に発見する指標になりうることが多くの研究からわかってきており、毎日の睡眠覚醒リズムを記録する重要性が指摘されている。

睡眠覚醒の正確な測定のためには、PSG測定と呼ばれる脳波等の測定が行われる。しかし、PSG測定のためには、多数の電極等を装着する必要があり、日常生活の睡眠状態の把握には適していない。一方、腕時計型ウェアラブルデバイスは、一日を通して装着し続けることが比較的容易だ。そこで、ほとんどの腕時計型ウェアラブルデバイスに搭載されている加速度計から得られる情報を用いて、腕の動きを元にして睡眠状態と覚醒状態を判定する試みが数多く行われてきた。しかし、これまでの多くの手法は、睡眠状態の判定について特異度が高くない、という問題があった。そこで、今回研究グループは、高い感度と特異度を両立した睡眠判定アルゴリズムを開発した。

ACCEL、課題だった睡眠判定の特異度は80%以上

まず、加速度計が取得する生データを記録し続けるための、シンプルな腕時計型ウェアラブルデバイスを作製。被験者に、作製したウェアラブルデバイスとPSG測定機器を同時に装着してもらい、睡眠測定室で1終夜過ごしてもらった。これにより、測定中の各時間における腕の加速度を計測し、同時にPSG測定の結果を用いて、それぞれの時間に被験者が睡眠状態であったのか、覚醒状態であったのかを測定した。

続いて、研究グループは、機械学習を用いて、腕の加速度データのみからPSG測定に基づく判定にできるだけ一致した睡眠と覚醒の判定を得る手法を探った。さまざまなデータ処理や、機械学習の手法を検討。その結果、ウェアラブルデバイスから得られる三軸加速度の微分値、つまり、躍度を用い、さらに、機械学習の手法XGBoostを用いることで、正確な睡眠覚醒の判定ができることがわかった。開発した睡眠判定アルゴリズムは、「ACCEL」と名付けられた。

ACCELは、睡眠判定の感度に関して、90%以上の高い値を示し、これまでの手法で問題であった睡眠判定の特異度に関しては、80%以上の高い値を示した。このことから、ACCELは、睡眠状態にある場合に高い確率で睡眠と判定するだけでなく、覚醒状態を高い確率で覚醒と判定することもできると考えられた。

観察された周期的な躍度、ノンレム睡眠時よりレム睡眠時に周期性が大きく変化

躍度データより、睡眠状態に代表されるような腕の動きが少ない時には、1Hz程度の周期的な躍度の変動が検出されることを発見。PSG測定で取得している生体信号との比較を行ったところ、この周期的な躍度の変動は、脈波とよく一致することが判明した。

人をはじめとする哺乳類の睡眠は、睡眠時間の多くを占めるノンレム睡眠と、覚醒に近い特徴をもつレム睡眠に大別される。脈波は、ノンレム睡眠時よりもレム睡眠時に大きな変動を示すことが知られているが、今回観察された周期的な躍度についても、ノンレム睡眠時よりもレム睡眠時に、その周期性が大きく変化することが明らかになった。

中途覚醒をより正確に捉えるACCEL、睡眠の健康管理への貢献に期待

現在のところ、ACCELはノンレム睡眠とレム睡眠を正確に見分けるための手法としては開発されていないが、躍度を用いた解析は2つの睡眠状態を区別するうえでも有用である可能性がある。同研究で開発されたACCELにより、ウェアラブルデバイスを用いた睡眠習慣の把握をより正確に行うことができると期待される。

特に、覚醒状態を正確に覚醒と判定できることは、睡眠中に一時的に覚醒する中途覚醒を正確に検知するために重要だ。中途覚醒の増加、すなわち眠りが浅くなり、睡眠中に何度も目が醒めてしまう状態は睡眠障害の一つ。たとえ睡眠時間に大きな変化がなかったとしても、さまざまな心身の不調に結びつく可能性がある。したがって、中途覚醒をより正確に捉えることができるACCELは、必ずしも総睡眠時間の変化につながらない、睡眠の「質の低下」を把握し、より有効な睡眠の健康管理に貢献すると期待される、と研究グループは述べている。

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