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三角頭蓋を伴う発達障害の新規責任遺伝子候補「PJA1」を同定-名古屋市大ほか

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2020年06月19日 PM12:00

発達障害は数百の遺伝子変異の報告があるが、大部分の患者は原因不明のまま

名古屋市立大学は6月17日、発達障害患者のゲノムDNA解析、疾患モデルマウス解析によって、多くの新規発達障害責任遺伝子の変異を同定し、さらにモデルマウスが発達障害およびてんかんに関連する症状を再現することを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科脳神経科学研究所の山川和弘教授(神経発達症遺伝学分野)らの研究グループが、横浜市立大学の松本直通教授(遺伝学)、沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの下地武義医師(脳神経外科)、理化学研究所脳神経科学研究センターの吉川武男チームリーダー(分子精神遺伝研究チーム)、名古屋大学の尾崎紀夫教授(精神医学・親と子どもの心療学分野)東京大学の狩野方伸教授(神経生理学分野)、福岡大学てんかん分子病態研究所の広瀬伸一教授(小児科)、湊病院北東北てんかんセンターの兼子直医師(センター長)、静岡てんかん・神経医療センターの井上有史医師らのグループと共同で行ったもの。研究成果は、「Annals of Clinical and Translational Neurology」に掲載されている。


画像はリリースより

発達障害は、人とのコミュニケーションの問題、社会性の障害、学習障害、落ち着きがない、じっとしていられない、集中できないなど多岐にわたる症状を通常低年齢(3歳くらいまで)において発症する疾患で、しばしば頭蓋骨の形成異常やてんかんなどを伴う。発達障害について、原因および発症メカニズムの解明、有効な治療法の確立が望まれている。近年の大規模なゲノム解析により、数百の遺伝子の新生変異が疾患原因として報告されているが、患者の大部分においては原因が未解明のままだ。

日本人患者558人の解析で責任遺伝子候補を複数同定、三角頭蓋の5人でPJA1変異

今回、研究グループは、日本人の発達障害患者合計558人に対して責任遺伝子探索を実施。発達障害患者95人(51例の三角頭蓋合併例と40例のてんかん合併例を含む)の全エクソーム解析析により、62個の新生変異を57遺伝子から同定した。これらの新生変異のうち、分断変異が17遺伝子から同定され、そのうち9遺伝子(CYP1A1、C14orf119、FLI1、CYB5R4、SEL1L2、RAB11FIP2、ZMYND8、ZNF143およびMSX2)は、これまでに発達障害の原因として報告のない新規の遺伝子だった。遺伝性変異として、55個の遺伝子からヘミ接合性変異、16遺伝子からホモ接合性変異、15遺伝子からコンパウンドヘテロ接合性変異を同定。これらの変異は、健常対照群575人には見られない非常にまれな変異だった。

注目すべきことに、タンパク質の分解に関わるE3ユビキチンリガーゼをコードするPJA1遺伝子の同一ヘミ接合性ミスセンス変異(p.R376C)が5人の患者で観察された。そこで、別の発達障害患者463人のターゲットシークエンス解析を実施。その結果、合計7人の発達障害患者から変異を同定し、そのうち5人が三角頭蓋を、1人が部分てんかんを伴っていた。

-KOマウスは発達障害とてんかんに関連する症状の一部を再現

研究グループは次に、ヒトPJA1変異に相当する変異(p.R365C)を導入したノックインマウス(Pja1-KI)およびPja1遺伝子を喪失したノックアウトマウス(Pja1-KO)を作製し、PJA1の機能異常がどのように三角頭蓋を伴った発達障害に関連するのか検討。これらマウスの脳内でのPJA1タンパク質の発現量をウエスタンブロット解析で確認したところ、Pja1-KIマウスでは40%程度減少し、Pja1-KOマウスでは完全に消失していた。これは、変異がPJA1タンパク質の機能喪失を引き起こすことを示唆している。

PJA1の変異が何らかの機能喪失を引き起こすことが想定されたことから、Pja1-KOマウスの行動試験を実施した結果、生後6日目の超音波発声試験で発声の強さ(amplitude)および周波数変調(frequency modulation)が野生型マウスと比較して統計的に有意に減少しており、また、発声持続時間が短い傾向を示した。これらの結果は、Pja1-KOマウスがコミュニケーション障害やPJA1変異を持つ患者全員で認められる言語獲得の遅れを再現するものだと考えられるという。さらに、スリーチャンバーテストと呼ばれる相手マウスへの接触回数を測定する方法により、Pja1-KOマウスが、社会的新奇性に対する嗜好性の不全を示すことを確認。また、ペンチレンテトラゾールへの感受性測定により、けいれん誘発性の亢進も確認。これにより、Pja1-KOマウスが、発達障害およびてんかんに関連する症状の一部を再現することを発見した。

転写因子をコードするMSX2遺伝子の変異は頭蓋形成異常患者で報告があり、また今回、頭蓋髄膜瘤とてんかんを伴った発達障害患者から新生分断変異が同定された。これまでにPJA1の持つタンパク質分解機能によりMSX2タンパク質が標的として分解されること、MSX2タンパク質発現量の増加が頭蓋縫合早期癒合症と関連があることが報告されていることから、PJA1遺伝子変異のMSX2を介したメカニズムが三角頭蓋、、発達障害の発症に関与している可能性が示唆される。(QLifePro編集部)

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