医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 脳卒中後の運動主体感「誤帰属」は、麻痺肢の正常な使用で改善する可能性-畿央大ほか

脳卒中後の運動主体感「誤帰属」は、麻痺肢の正常な使用で改善する可能性-畿央大ほか

読了時間:約 2分5秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年05月22日 AM11:45

脳卒中患者で感覚の「誤帰属」の報告、改善は可能か?

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターは5月21日、2人の脳卒中患者を対象に、運動主体感と脳卒中後運動障害の関係性について縦断的に検証した結果を発表した。これは、同大大学院博士後期課程の宮脇裕氏(日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)、同センターセンター長の森岡周教授、仁寿会石川病院リハビリテーション部の大谷武史室長の研究グループによるもの。研究成果は、「Brain Sciences」に掲載されている。


画像はリリースより

自己由来感覚と外界由来感覚を区別することは「自他帰属」と呼ばれており、これが上手くいかなくなると、「自分が運動を制御している」という意識経験である運動主体感の変容を招いたり、不必要な感覚に基づいて運動を遂行してしまったりすることがわかっている。この自他帰属について、運動障害を有する脳卒中患者は、感覚を誤って帰属(誤帰属)することがあるという報告がある。しかし、脳損傷そのものが誤帰属を招くのか、感覚運動障害などに伴う二次的な影響により誤帰属が生じるのかは明らかになっていない。そこで、研究グループは、運動障害と運動主体感の関連性を検証するため、高次脳機能障害を招き得る皮質損傷を有さない脳卒中患者2人について検討した。

運動障害を有する脳卒中患者で、MAL値の向上に伴い感覚の誤帰属が改善

運動障害があり日常生活で麻痺肢をほとんど使用できていない患者Aと、運動障害がごく軽度で日常生活で麻痺肢をほぼ正常に使用できている患者Bが実験に参加。脳卒中発症後2、4、8週目の3地点で上肢運動課題を実施した。上肢運動課題では、参加者は、モニター上に水平に表示されたターゲットラインをなぞるように、ペンタブレット上で水平運動を遂行した。この際、視覚フィードバックとしてカーソルが表示されていた。

カーソルの動きには、自分のリアルタイムの運動が反映されている場合(SELF条件)と、事前に記録した他者運動が反映されている場合(OTHER条件)を設定。参加者には、自分の実際のペン運動とカーソル運動の時空間的な一致性に基づいて、カーソルが自己運動と他者運動のどちらを反映しているかの判断を求めた。麻痺肢の使用頻度および機能については、日常生活でどの程度正常に麻痺肢を使用できているかを測るMotoractivitylog(MAL)や、上肢の脳卒中後運動障害の包括的評価法であるFugl-Meyer Assessment of upperextremity()などにより評価した。

その結果、患者Aでは、4週目でOTHER条件における有意な誤帰属(他者運動のカーソルを自分の運動と判断)を認めた一方、患者Bでは全ての地点で誤帰属を認めなかった。また、患者Aの誤帰属は、MAL値が向上(日常生活で麻痺肢をほとんど正常に使用)した8週目には大幅な改善を認めた。

今回の研究により、皮質下損傷を有する脳卒中患者の運動主体感が、脳損傷そのものよりも麻痺肢の機能障害や使用頻度に関連しており、それらの変化に応じてダイナミックに変化する可能性が示唆された。「今後は、この誤帰属の原因および機能回復に及ぼす影響を解明するために、実験手続を修正した上で、多くの参加者を対象に縦断研究を実施する予定だ」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 国内の5歳児における自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上-弘前大
  • 急性心筋梗塞治療の予後、地域の人口密度と病院の診療実績が影響-横浜市大ほか
  • 老化T細胞を生体から除去する治療ワクチンの開発に成功-阪大ほか
  • 肺動脈性肺高血圧症、患者細胞を用いて薬剤探索用病理モデル作成に成功-岡山大ほか
  • 神経難病ポリグルタミン病、「L-アルギニン」が治療薬候補に-阪大ほか