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母乳が乳児の腸内細菌叢を制御するメカニズムを解明-東京農工大ら

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2018年11月20日 PM12:30

腸内細菌叢の形成に影響を与える母乳

東京農工大学は11月15日、マウスを用いた実験により、母乳中のアミノ酸代謝から産生される過酸化水素が乳子の腸内細菌叢()の形成に関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学研究院動物生命科学部門の永岡謙太郎准教授らの研究グループが、理化学研究所科、東北大学、京都府立大学、中国科学院動物研究所と共同で行ったもの。研究成果は「The FASEB Journal」に掲載されている。


画像はリリースより

腸内細菌叢は生まれて間もなく形成が開始され、離乳などのイベントを経て徐々に大人の菌叢へと近づく。一般的に哺乳期間を含む腸内細菌叢の形成過程に獲得した腸内細菌は、多少のバランスの変化は起こり得るものの生涯不変といわれており、老化とともに乳酸菌やビフィズス菌といった、いわゆる善玉菌が減少する以外、基本菌叢パターンを大きく変えることは難しいとされている。現段階では、哺乳中に形成される腸内細菌叢をいかにして正常な菌叢に整えるかが重要であり、母乳中にその理由があると考えられる。

活性酸素が菌の多様性を制御する可能性

今回、研究グループは、マウスの母乳中に多く含まれるアミノ酸代謝酵素遺伝子()を欠損させたマウス(LAO1欠損マウス)を用いて、母乳にLAO1が含まれるか否かで子の腸内細菌叢が変化するかを遺伝子レベルと培養レベルで調査。その結果、野生型の母マウスから母乳を摂取している子マウスの腸内細菌叢は従来の報告通り、そのほとんどが乳酸菌で占められ、菌の多様性は抑えられていた。一方、LAO1欠損の母マウスの母乳を飲んでいる子マウスの腸内細菌叢にはさまざまな菌が存在し、すでに大人の菌叢に近い状態だった。また、LAO1は乳子の消化管内でも機能を失わず、アミノ酸を分解して過酸化水素を産生すること、過酸化水素は乳酸菌以外の細菌に対して抗菌性を示すことを確認した。

これらの結果から、野生型の母乳を飲むと菌の多様性が抑えられる仕組みとして、乳子の消化管内で産生される過酸化水素が外部から侵入してくる細菌群から選別し、乳酸菌を優先的に届けていることが考えられるという。人においても、母乳を飲んでいると腸内の菌の多様性が抑えられ、母乳摂取を止めると多様性が増えていくことが知られている。しかし今回、人の母乳を用いた実験では、アミノ酸代謝による過酸化水素産生はマウスに比べてかなり低いことが示された。この結果は、人の乳児の腸内細菌叢では、乳酸菌がそれほど増えない理由につながる可能性があるという。

今回の研究により、過酸化水素をはじめとする活性酸素を有効利用することで、腸内細菌叢形成過程において菌の多様性を制御できる可能性が示された。さらにLAO1欠損マウスを用いることで、乳児期の腸内細菌の多様性の違いが生後の生体機能にどのような影響を与えているかを調べることが可能となる。研究グループは今後、脳機能や代謝機能など広く検討を行っていくとしている。

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