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PI3K阻害剤ZSTK474が特定の肉腫に奏功-がん研

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2018年10月30日 AM11:30

ZSTK474臨床試験参加の肉腫患者4名中3名で長期病勢安定

がん研究所は10月26日、新規PI3キナーゼ阻害剤ZSTK474が、希少がんである肉腫の特定のサブタイプに著効を示すことを試験管内実験、動物実験で明らかにしたと発表した。この研究は、がん研究会がん化学療法センター・分子薬理部の旦慎吾部長らの研究グループによるもの。研究成果は「Oncotarget」に掲載された。


画像はリリースより

ZSTK474は、全薬工業株式会社で合成され、がん研が、がんの増殖・生存に中心的な役割を果たす細胞内シグナル伝達因子であるホスファチジルイノシトール-3キナーゼ()の強力な阻害物質であることを見出した抗がん物質。同剤はこれまでに、新規抗がん剤として日米で第1相臨床試験が行われているが、米国で行われた臨床試験に参加した4名の肉腫患者のうち3名で長期の病勢安定が得られたことから、肉腫への効果が注目されている。

肉腫は、骨や軟部組織から発生する非上皮性のがんで、希少がんに分類される。50種類以上のサブタイプに細分化され、それぞれの発生頻度はさらに低いことから、がん腫と比較して肉腫に適応を有する抗がん剤の種類は少なく、新薬の開発や、既存抗がん剤の肉腫への適応拡大も進んでいない。肉腫の治療は手術が中心となるが、放射線療法、抗がん剤治療も併用される。しかし、症例数の少ない肉腫サブタイプについては未だ標準治療法が確立していない。再発・転移がんでの治療成績も芳しくなく、新しい肉腫治療薬の開発が求められている。

、滑膜肉腫で良好な抗がん効果

今回の研究では、ZSTK474について、さまざまな肉腫サブタイプに対する抗がん効果を調べ、現在肉腫で使用されている抗がん剤と比較した。試験管内実験の結果、STK474は、ドキソルビシンなどの既存薬が奏功する、しないにかかわらず、調べた14種すべての肉腫細胞に対して細胞増殖を効率的に抑制したという。これらの肉腫細胞のうち、染色体転座による融合遺伝子が認められるユーイング肉腫(EWSR1-FLI1融合遺伝子陽性)、胞巣型横紋筋肉腫(PAX3-FOXO1融合遺伝子陽性)、(SS18-SSX1/2融合遺伝子陽性)の細胞では、増殖の抑制だけでなく、アポトーシスの活性化を引き起こすことで強力な抗がん効果を発揮することが明らかとなった。

また、免疫不全マウスを用いた動物実験では、6種の肉腫細胞を移植して形成された腫瘍(ゼノグラフト)すべてに対して、ZSTK474は既存薬であるドキソルビシンと同等以上の抗がん効果を示したという。とくに、染色体転座陽性の肉腫サブタイプ由来の腫瘍に顕著な抗がん効果を発揮し、腫瘍内のがん細胞にアポトーシスを起こすことが動物実験でも確認された。また、動物実験により、ZSTK474は腫瘍内の血管形成を阻害することが示され、その効果は既存の血管新生阻害剤パゾパニブに匹敵することがわかったという。このことから、同剤による抗がん効果は、腫瘍に対する直接効果だけでなく、血管新生阻害よる間接効果の寄与も大きいと考えられるという。

今回の研究結果から、ZSTK474は、肉腫のなかでも、とくに染色体転座陽性のユーイング肉腫、胞巣型横紋筋肉腫、滑膜肉腫に良好な抗がん効果を発揮することが明らかとなった。研究グループは、若年で発症する肉腫のアンメットメディカルニーズに応える新たな治療オプションを提供することにつながる重要な発見だとしている。

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