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がんの自動病理診断に繋がるSERSイメージング技術を開発-富士フイルム

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2018年04月24日 AM11:45

世界初、がん組織を非標識・無染色で自動的に可視化

富士フイルム株式会社は4月19日、対象物への光照射で生じる散乱光を増強し、高感度に物質を検出する表面増強ラマン分光()を活用して、組織の代謝物を非標識・無染色で高精度に大面積で分析できるイメージング技術を開発し、同技術を応用した、同社R&D統括本部先端コア技術研究所と慶應義塾大学医学部医化学教室の加部泰明専任講師らとの共同研究において、マウス生体切片中のがん組織の分布を、SERSイメージングによる代謝物情報から自動的に可視化することに世界で初めて成功したと発表した。研究成果は「Nature Communications」に掲載されている。

現在、がんなど病変部の組織の分析方法として、抗体による標識や、染色を用いた、細胞形態のイメージング手法が一般的に利用されている。しかし、細胞のわずかな形態異常から組織を高精度に分析するには、熟練を要す。こうした中、標識・染色による形態分析ではなく、病変部特有の代謝物などの物質を同定することで組織を分析できるSERSを活用したイメージング(SERSイメージング)に注目が集まっている。

SERSイメージングは、基板上の対象物に光を照射したときに、物質の分子構造に応じて固有の波長を持つ光が散乱されるラマン散乱という現象を活用した分析方法。さらに、基板上にナノサイズの金など金属微粒子を配置することで対象物からのラマン散乱を増強でき、高感度に物質を検出できるが、金属微粒子を基板上に大面積で均一に配置することや、強められたラマン散乱光から必要な情報だけを取り出して画像化することが困難だったという。

モデルマウスでがん特有の分布を示す代謝物を特定

富士フイルムは、先端コア技術研究所にて将来に向けた新たな技術開発を進める中、写真フィルムで培った粒子形成技術やナノフォトニクス技術などを活かし、非標識・無染色で組織の代謝物を大面積で高精度に分析できるSERSイメージング技術を開発。ソラマメ状の金の微粒子を基板上に均一に分散させることにより、従来のラマンイメージングを大幅に上回る感度で、大面積の対象物の検出ができる。また、独自のイメージングのアルゴリズムにより、必要な情報だけを取り出すことで、病変部などの対象物の高精度な画像化が可能だという。基板に透明なガラスとベーマイトを採用したことで、基板側から光を照射することが可能で、対象物に妨げられずに光の照射およびラマン散乱の検出ができるため、高精度な分析を実現したとしている。


画像はリリースより

さらに今回、慶應義塾大学医学部医化学教室との共同研究において、モデルマウスの生体切片中のがん組織の分布と、SERSイメージング技術で検出した各種代謝物のラマン散乱光の照合を実施し、がん特有の分布を示す代謝物を特定。また、独自の画像処理を行うことで、SERSイメージングによる代謝物情報から非標識・無染色でがん組織の分布を自動的に可視化することに世界で初めて成功した。

この技術を発展させることにより、わずかな形態異常からの診断ではなく、代謝物情報からがんの進行状態のより正確な判別に繋がる可能性がある。同社は、「さらに、継続的な検査による抗がん剤に対する耐性の有無やがんの悪性度判定など、がんの質的診断の実現に繋がることが期待できる」と述べている。

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