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女性に多い「NTM-PD」の発症・再発に、腸内細菌叢の乱れが関与-日大ほか

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2025年07月11日 AM09:20

「非結核性抗酸菌による肺疾患」の発症・進行メカニズムは未解明

日本大学は6月23日、女性に多い非結核性抗酸菌症による肺疾患の発症・再発に腸内フローラ()の乱れが関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部内科学系呼吸器内科学分野の神津悠助教、丸岡秀一郎准教授、權寧博教授らの研究グループと、シン・バイオシスソリューションズとの共同研究によるもの。研究成果は、「Biomedicines」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

非結核性抗酸菌による肺疾患()の発生率は世界的に増加していると報告されている。日本も例外ではなく発生率が増加しており、公衆衛生上の懸念事項として認識されている。2009~2014年までの日本の健康保険請求のデータを分析した全国的な研究では、新たにNTM-PDと診断された症例の69.6%が女性で、平均年齢は69.3歳となっており、特に痩せ型の高齢女性に多く見られる傾向が報告されている。NTM-PDの治療は難しく、多くの場合、複数の抗菌薬を用いた長期の治療を必要とする。また、抗菌薬を用いた治療が無事に完了した後でも、半数近くの患者で微生物学的再発(再度の非結核性抗酸菌による感染)が起きる可能性がある。

しかし、NTM-PDの発症・進行のメカニズムについては完全には解明されておらず、その解明が急務となっている。近年の国外の研究からは、腸内細菌叢の異常がNTM感染の素因に寄与する可能性が報告されている。一方で、日本人の腸内細菌叢は、諸外国とは異なるユニークな構成を示すことが報告されていることから、諸外国の腸内細菌叢の研究結果が日本人にもあてはまるとは限らない。

そこで研究グループは今回、治療前、治療中、再発の治療状況が異なる50~80代の日本人NTM-PD女性患者の腸内細菌叢を調べることで、NTM-PDと腸内細菌叢の関連、さらには抗菌薬を用いた治療の課題を明らかにすることを目指した。

50~80代の日本人NTM-PD患者を調査、NTM-PD罹患に関連の可能性がある腸内細菌を特定

研究グループは、日本人で50~80代のNTM-PD患者群(女性20人)と健常者の対照群(健常者群 女性20人)の腸内細菌叢を、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子配列解析により比較した。

その結果、治療前群と再発群では、Sutterella、Adlercreutzia、Odoribacter、およびPrevotellaの相対存在量が健常者群と比較して少ないこと、Erysipelatoclostridium、Massilimicrobiota、Flavonifractor、Eggerthella、およびFusobacteriumの相対存在量が健常者群と比較して多いことが共通していた。これらの腸内細菌はNTM-PDの罹患に関連している可能性がある。

抗菌薬が変化した腸内細菌叢の構成を固定化、治療後のNTM-PD再発に関連の可能性

また、治療前群と治療中群の間で、健常者群と比較して相対存在量が少ない腸内細菌を比較すると、そのほとんどが異なっていた。さらに、ともに治療を経験している治療中群と再発群の間では、健常者群と違いのある腸内細菌として9つの菌が共通していた。これは、治療後も腸内細菌叢の異常が維持される可能性を示唆している。

以上の結果から、抗菌薬を用いた治療が、腸内細菌叢のさらなる異常を引き起こすだけでなく、変化した腸内細菌叢の構成を長期的に固定化し、それが治療後のNTM-PDの再発に関連する可能性が示唆された。

NTM-PDのメカニズム解明、腸内細菌叢を標的とする治療法開発につながることに期待

したがって、再発を防ぐためには、治療後にプロバイオティクスやプレバイオティクスなどによる積極的な腸内細菌叢の改善を行うことが有効な手段の一つと考えられる。また、これらの結果は、日常的に腸内細菌叢を良好な状態に保つことがNTM-PDの有効な予防策になることを示唆している。そのため、腸内細菌叢の状態を定期的に検査し、必要に応じて食生活等を介した腸内細菌叢の改善に取り組むことが、NTM-PDのリスク回避につながると考えられる。

「本研究で明らかとなったNTM-PDと腸内細菌叢の関連性は、NTM-PDの発症・進行のメカニズムの理解、腸内細菌叢をターゲットとする新たなNTM-PDの予防・治療方法の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

 

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