医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 海外 > 喘息治療の吸入ステロイド薬、夜間の症状に効果的な投与時間帯は?

喘息治療の吸入ステロイド薬、夜間の症状に効果的な投与時間帯は?

読了時間:約 2分25秒
2025年05月01日 PM04:00

喘息治療における吸入薬投与の最適なタイミングとは

喘息患者は、1日1回の吸入ステロイド薬を遅めの午後に使用することで、夜間の症状を効果的にコントロールできる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英マンチェスター大学のHannah Jane Durrington氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に4月15日掲載された。


画像提供HealthDay

薬物投与のタイミングを体内時計に合わせる治療法はクロノセラピー(時間治療)と呼ばれ、薬の治療効果を高めることが期待されている。Durrington氏らによると、喘息には明確な日内リズムがあり、気流閉塞と気道炎症の主要な影響は夜間にピークに達する。実際、致死的な喘息発作の約80%は夜間に発生しているという。

このことを踏まえてDurrington氏らは、25人の喘息患者を対象にランダム化クロスオーバー試験を実施し、クロノセラピーの効果を検討した。対象患者は、吸入ステロイド薬のベクロメタゾンプロピオン酸エステルを、以下の3通りの投与法でランダムな順序で投与した。1)午前8〜9時の間に400μgを1日1回投与(午前投与)、2)午後3〜4時の間に400μgを1日1回投与(午後投与)、3)午前8〜9時の間と午後8〜9時の間の2回に分けて200μgずつ投与(2回投与)。投与期間は28日であり、各投与法の間には2週間のウォッシュアウト期間を設けた。

25人中21人が全ての投与法を完了した。治療により肺機能は全ての投与法でベースラインより改善していたが、改善のタイミングは投与法により異なり、午後10時のFEV1(1秒量)については、午後投与での改善が最も大きかった。FEV1とは、最大限に息を吸った後、できるだけ強く、速く息を吐き出した際の最初の1秒間の呼出量のこと。具体的には、午後投与では中央値で160mLの改善が認められたのに対し、2回投与では中央値で80mLの改善にとどまっており、午前投与では中央値で−20mLと改善は認められなかった。また、午後投与は夜間(午後10時と午前4時)の血中好酸球数の抑制に最も効果的だった。好酸球の増加は、気道の炎症や過敏性、狭窄の原因として知られている。

研究グループは、「これらの結果は、人の体内時計に合わせて投与のタイミングを調整するクロノセラピーの有効性を裏付けるものだ」と述べている。研究グループは、喘息の症状に関連する炎症の連鎖は午後半ばに始まる傾向があり、そのときに予防的な吸入薬を投与すると効果が高まる可能性がある」と指摘している。

一方、本論文の付随論評では、午後投与では肺機能と好酸球数の点で臨床的に重要な違いが確認されたものの、全体的な症状のコントロールが優れていたとは言えないことが指摘されている。ただし、それは対象者数の少なさと追跡期間の短さが原因である可能性はある。付随論評の著者の1人である英キングス・カレッジ・ロンドンのRichard Edward Russell氏は、「これらの研究結果を臨床実践に応用する場合、最大の課題は喘息治療の遵守になるだろう。一般人口の約30~40%が吸入ステロイド薬を指示通りに使用することに苦労している現状を考えると、使用時間を限定することは事態をさらに複雑にする可能性がある」と述べている。

研究グループは、本研究で確認された吸入ステロイド薬の投与のタイミングが夜間の発作に与える影響を確認するために、より大規模な試験の実施を推奨している。(HealthDay News 2025年4月16日)

▼外部リンク
The impact of dosage timing for inhaled corticosteroids in asthma: a randomised three-way crossover trial

HealthDay
Copyright c 2025 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock
 

同じカテゴリーの記事 海外

  • 真陽性率93.3%、慢性腎臓病を簡単に検出できる「呼気センサー搭載マスク」
  • インフルエンザ+新型コロナの混合ワクチンの有効性確認-P3試験結果
  • 超加工食品の摂取量、10%増加するごとに「全死亡リスク」2.7%上昇
  • コロナ禍で高齢者たちの救いとなった「バーチャル合唱プログラム」の強み
  • 子の「先天性心疾患」リスクを高める、意外すぎる妊娠初期症状とは?
  • あなたは医療関係者ですか?

    いいえはい