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月経前症候群/不快気分障害に対する漢方薬、処方実態が明らかに-近大ほか 

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2025年03月07日 AM09:30

確立された教育方法はなく、産婦人科医個人の経験・知識により処方選択

近畿大学は2月21日、日本の産婦人科医を対象とした調査研究によって、(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の診断・治療の実態を分析し、治療薬として漢方薬の使用頻度が高いことを日本で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大東洋医学研究所所長の武田卓教授らを中心とする日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会の研究グループによるもの。研究成果は、「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」に掲載されている。

PMSおよびPMDDは、月経前の不快な精神・身体症状が特徴で、女性のパフォーマンスを障害し、女性活躍促進やフェムテックにおいても最近特に注目されている疾患である。PMSとPMDDの世界的な標準治療薬として、低用量ピル(OCPs)や抗うつ薬であるSSRIs・SNRIsが知られているが、日本では、これらの標準治療薬にPMSやPMDDへの保険適用がなく、薬を使用することに対するイメージが悪いことからも、諸外国と比較して十分な治療が行われていない。

2021年度と2022年度に日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会で実施された、「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療実態調査小委員会」の産婦人科医を対象とした調査結果では、標準治療以外では漢方治療が汎用されていることが明らかになっている。漢方治療は西洋医学とは異なり、同じ疾患に対しても細かな症状の違いに対応して、複数の漢方薬から適切な処方を選択する難しさがある。また、確立された教育方法が存在せず、各医師の個人の経験・知識により処方選択が行われているのが現状だ。

、抑肝散の4種、使用頻度が高い

今回研究グループは、その調査結果を二次解析した。全学会員1万6,732人に調査協力を依頼し、回答を得た1,312人のうち、PMS・PMDDの診療に従事し漢方薬を処方している産婦人科医1,259人について解析した。このうち19.5%がPMS・PMDDの第一選択治療として漢方薬を使用しており、最も使用頻度が高い漢方薬は、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、抑肝散の4種類であることがわかった。

漢方薬の処方傾向は低用量ピルと類似、抗うつ薬とは異なる治療群に属する

対応分析の結果、漢方薬の処方傾向は低容量ピルOCPsと類似しており、抗うつ薬であるSSRIsやSNRIsとは異なる治療群に属することがわかった。また、そのなかで抑肝散はSSRIs/SNRIsと最も近い特性を示した。

医師の経験値などより処方選択が異なる傾向

さらに、当帰芍薬散および桂枝茯苓丸は10年未満または10~20年の比較的経験の浅い医師によって選択されやすいこと、加味逍遙散および抑肝散は、開業医によって処方される傾向が強いこと、抑肝散は抗うつ薬SSRIs/SNRIsやその他のサプリメント等との併用が多いことも判明した。この結果から、抑肝散に関してはどちらかというとPMS・PMDD治療に精通した者が選択していることが示唆された。

「今回実施した解析結果により、産婦人科医に対して各処方の特性に基づいた教育を体系的に実施することによって、PMS・PMDDに対するより有効な治療の普及が期待される」と、研究グループは述べている。

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