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統合失調症の「認知機能障害」を回復する皮下投与薬候補を開発-北陸先端大ほか

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2024年07月05日 AM09:20

統合失調症の「」に効果的な治療薬は存在しない

北陸先端科学技術大学院大学は6月27日、統合失調症の認知機能障害を回復する新薬になり得る脳移行性の皮下投与型ペプチドナノ製剤の開発に成功したと発表した。この研究は、同大物質化学フロンティア研究領域の都英次郎准教授、広島大学大学院医系科学研究科の吾郷由希夫教授、大阪大学大学院薬学研究科の中川晋作教授、筑波大学医学医療系の広川貴次教授、一丸ファルコス株式会社の坂元孝太郎開発2課長らの研究グループによるもの。研究成果は、「JACS Au」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状、意欲の低下などの陰性症状、そして注意・集中力の低下や記憶力・判断力の低下といった認知機能障害などを特徴とする精神疾患で、人口の約1%に発症し、その罹患者は日本では約80万人、全世界では2000万人以上いると言われている。既存薬は神経伝達物質の調節に関わるメカニズムを有するもののみであり、その治療効果は限定的で、特に認知機能障害に対する効果が乏しい。

近年、神経ペプチド受容体VIPR2の過剰な活性化が統合失調症の発症に関与することが臨床研究および非臨床研究で明らかとなり、新たなメカニズムの統合失調症治療薬につながることが期待されている。研究グループはこれまでに、VIPR2を選択的に阻害するペプチドKS-133を見出していたものの、脳への移行性が低いことが課題だった。

開発したペプチド製剤投与で、動物モデルの認知機能障害が健常レベルまで回復

今回の研究では、KS-133を脳に送り届けるためのナノ製剤化を検討した。血液脳関門に発現するLDL受容体関連タンパク質のLRP1は、物質を血中から脳組織に移行させる働きがある。研究グループはこれまでに、LRP1に結合するペプチドKS-487を見出していた。そこで、(1)LRP1とKS-487の複合体の構造解析を分子動力学シミュレーションで実施、(2)その構造を元にKS-487を表面に提示するナノ粒子をデザイン、(3)バイオイメージング試験で皮下投与されたKS-487提示ナノ粒子が脳に移行することを確認、(4)KS-487提示ナノ粒子にKS-133を内包させたペプチド製剤を調製し、その効果を動物モデルで確認した。

その結果、KS-133とKS-487を同時に搭載するナノ粒子が、KS-133を脳に効果的に移行させ、動物モデルの認知機能障害を健常レベルまで回復させることが判明した。

統合失調症の新規メカニズムの治療薬開発につながることに期待

同ペプチド製剤はVIPR2阻害という既存薬とは全く異なるメカニズムを有しており、アンメットメディカルニーズである統合失調症の認知機能障害を対象とした新薬になることが期待される。

「今後、細胞や動物モデルなどを用いたさらなる検討、そしてヒトでの臨床試験によって、本ペプチド製剤の有効性と安全性を確認し、統合失調症の新しい治療薬として開発を進めていく」と、研究グループは述べている。

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