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食後インスリン分泌に「野菜を噛んで食べること」が影響する機序解明-早大ほか

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2024年04月23日 AM09:20

血糖値上昇抑制のための野菜の取り方、咀嚼との関連は不明だった

早稲田大学は4月17日、(キャベツ)を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の食後における代謝への影響を調べたところ、噛むことでインスリンがしっかりと分泌され、その作用機序の一つとしてインスリンの分泌を促す作用を持つホルモンであるインクレチンが食後の初期段階で刺激されることを発見したと発表した。この研究は、同大スポーツ科学学術院の宮下政司教授、同大スポーツ科学研究センターの亀本佳世子研究助手(当時)と、キユーピー株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

食事を取ると血糖値が上昇する。健康なヒトの場合は、血糖値を下げる働きをするインスリンが分泌され、体内に糖質を取り込むため血糖値は下がる。ところが、食後のインスリン分泌が少ない場合や、働きが不十分だと、血糖値が高いままの状態である「食後高血糖」を引き起こす。食後の血糖値が高い状態が続くことは糖尿病予備群の可能性があり、さらに動脈硬化の危険因子となるため注意が必要だ。

これまで食後の血糖値上昇を抑える食品や食事法に関する研究が数多く行われてきた。その一つが「、噛むこと」だ。咀嚼は消化の最初のプロセスであり、固形物を粉砕し唾液の分泌を促す。さらにエネルギー吸収に関与し、充分な咀嚼は空腹感を抑えることが報告されている。健康な成人を対象とした研究では、食事の前にガムを噛む、または食事中の咀嚼回数を増やすことにより、食後の血中グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1:)や、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic peptide:)などのインクレチンの分泌が促進され、早期のインスリンの分泌が促されることで食後血糖値の上昇が抑えられることが明らかとなっている。

食事の始めに野菜を摂取する、いわゆる「ベジタブルファースト」の食事法は、食後血糖値の上昇を抑える働きがあることが報告されている。これは野菜に多く含まれる食物繊維が関係していると考えられている。また、野菜の形状の違い(固形または液状)によって食後血糖値に及ぼす影響は異なることも報告されている。しかしながら、野菜を咀嚼して取ることが食後血糖値とインスリンやインクレチンなどのホルモンの分泌に及ぼす影響は不明だった。

成人男性19人対象に咀嚼/非咀嚼条件の交差試験

そこで今回研究グループは、食前に固形の野菜を咀嚼して摂取することが食後の糖代謝に及ぼす影響について検証した。19人の健康な成人男性(平均22歳)を対象として、野菜を噛んで食べる「咀嚼条件」(千切りキャベツ+ゼリー飲料)と、野菜を噛まずに食べる「非咀嚼条件」(キャベツ粉砕物+ゼリー飲料)のそれぞれ2条件に参加する交差試験を行った。食べ始めを0分として、0分、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分後に、それぞれの条件で採血を行い、「血糖」および、血糖値変動メカニズムの指標として「」「(GIP、GLP-1)」の血中濃度を調べた。

咀嚼条件でインスリン/GIPが有意に高い結果、血糖値は差なし

その結果、試験全体(180分)におけるインスリンおよびGIPの上昇曲線下面積が咀嚼条件で高値を示すことが確認された。一方、血糖では明らかな差は確認されなかった。また、消化吸収速度で血中の応答が変わってくるGLP-1には、胃内容物排出の遅延を介した食後の血糖値の上昇を抑制する作用を有するため、GLP-1の血中の経時変化による解析を行い、比較したところ、咀嚼条件で食事開始45分から90分の時間帯で高値を示すことが確認された。一方、試験全体(180分)におけるGLP-1の上昇曲線下面積では明らかな差は確認されなかった。

幅広い年代や性別での調査が必要だが、意識して噛んで食べることが重要

研究では、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の「咀嚼」に着目し、その代謝への影響を検討するため、用いたその他の食品として咀嚼せずに摂取できるゼリー飲料を用いた。食後のインスリンおよびインクレチン分泌が促進されたにも関わらず、食後血糖値は条件間で差が認められなかったのは、試験食が一般的な食事とは異なるゼリー飲料であったことが理由の一つとして考えられた。

インスリンの分泌には、食事をして血糖値が上がることによって出るインスリンとインクレチンによって出るインスリンがあるが、今回の研究において、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べる」ことが、どちらに作用、あるいは両方に作用したかは不明だ。魚や肉に含まれる脂肪酸がインクレチン分泌を促すことが知られていることから、今後、野菜と一般的な食事とを組み合わせ、「ゆっくりとよく噛んで食べる」ことで、研究と同様に食後にインスリンやインクレチンの分泌が促進し、食後の血糖値の上昇を抑えられるかを幅広い年代や性別で調査する必要がある。

「加齢に伴いインスリンの分泌が低下するため、野菜を「噛んで食べること」でインスリンの分泌が刺激される可能性が示唆された若年者を対象としたこの研究結果は大変意義深い。また、国が推進する食育推進基本計画では、「食育の推進に当たっての目標」の一つに、「ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす」ことが掲げられ、国民が生涯を通じ心身の健康を支える食育の推進の視点として「噛む」ことを推奨している。しかしながら最近は、固い食べ物は敬遠され、やわらかい食品が好まれる傾向にあり、意識して「噛む」ことが求められているため、普段の生活の中の実践が期待される」と、研究グループは述べている。

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