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桿体一色覚、RPGRIP1遺伝子の構造変異を日本人患者で発見-東京医療センターほか

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2024年04月10日 AM09:10

全エクソーム解析では、日本人患者の6割で原因遺伝子が未同定

東京医療センターは4月1日、原因遺伝子不明だった桿体一色覚患者10家系の全ゲノム解析を行い、そのうち5家系にRPGRIP1遺伝子の構造変異があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター臨床研究センター分子細胞生物学研究部の岩田岳名誉部長、須賀晶子主任研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科の吉武和敏助教、Japan Eye Genetics Consortium(JEGC)に参加する国内の大学病院や眼科施設らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Genetics in Medicine Open」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

桿体一色覚は色覚異常に加えて幼少期からの視力低下(0.1以下)を伴うまれな先天性の疾患で、潜性遺伝形式をとり、発症率は3~5万人に1人と言われている。桿体一色覚では遺伝子の変異により網膜の2種類の視細胞のうち錐体視細胞が機能できず桿体視細胞のみが機能しており、6つの原因遺伝子(CNGA3、CNGB3、GNAT2、PDE6C、PDE6H、ATF6)が明らかになっている。欧米では桿体一色覚患者の原因遺伝子同定率が非常に高く、CNGA3とCNGB3の変異が患者の約80%を占めているという報告もある。一方で、研究グループが以前行った日本人遺伝性網膜疾患患者の全エクソーム解析では桿体一色覚が疑われる患者の原因遺伝子同定率は34%にとどまり、全エクソーム解析では見つからない変異、または既知の6遺伝子以外の原因があることが予想された。

原因不明の199家系を全ゲノム解析、7家系でRPGRIP1遺伝子にイントロン含む構造変異

研究グループは、桿体一色覚を含む遺伝性網膜疾患(IRD)患者のうち全エクソーム解析では原因遺伝子がわからなかった199家系を対象に全ゲノム解析を行い、イントロン内の変異・構造変異が疾患原因となっている可能性を検討した。その結果、眼科の検査で桿体一色覚と診断された10家系のうち7家系の患者がRPGRIP1遺伝子の18番エキソンを含む約1.3kbを欠損する構造変異(NM_020366.4:c.2710+374_2895+78del:-ex18-DEL)を共通して持つことを発見した。このうち5家系では患者の両アレルにRPGRIP1-ex18-DELがあり(ホモ接合)、2家系では片アレルにRPGRIP1-ex18-DEL、もう一方のアレルにRPGRIP1の別の変異があった(複合ヘテロ接合)。RPGRIP1は、やはりIRDであるレーベル黒内障の原因遺伝子として知られているが、レーベル黒内障が一般的に桿体・錐体両方の視細胞が障害され網膜変性を伴うのに対し、今回の患者らは桿体機能が維持されており網膜の変性も見られず、桿体一色覚と考えられた。また、これらの患者に6つの桿体一色覚原因遺伝子の有害変異は認められなかった。

RPGRIP1はレーベル黒内障の治療標的として研究が進む

RPGRIP1-ex18-DELは日本人の健常者でも片アレルのみに0.23%の頻度で検出される構造変異だが、両アレルにこの変異を持つ人は全ゲノム解析を行った199家系のIRD患者のうち桿体一色覚患者に限られていた。これらの結果から、日本人の桿体一色覚患者の一部ではRPGRIP1の構造変異が原因となっていることが示唆された。海外では桿体一色覚の遺伝子治療の治験がCNGA3、CNGB3を標的として進められている一方で、RPGRIP1はレーベル黒内障の治療標的として研究が進められている。「今後はRPGRIP1-ex18-DEL変異ではなぜ錐体細胞の機能だけが障害されるのかを転写産物の機能解析を通じて明らかにすることを予定している」と、研究グループは述べている。

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