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悪性末梢神経鞘腫、治療標的候補となりうるタンパク質相互作用発見-岡山大

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2024年04月02日 AM09:10

悪性末梢神経鞘腫瘍の予後改善には浸潤・増殖の分子メカニズム解明が重要

岡山大学は3月27日、悪性末梢神経鞘腫瘍において腫瘍が悪性化するメカニズムの一つを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の棏平将太大学院生、学術研究院医歯薬学域(医)組織機能修復学の宝田剛志教授、髙尾知佳講師、山田大祐研究准教授、大曽根達則助教、整形外科学の尾﨑敏文教授、藤原智洋講師、運動器医療材料開発講座の国定俊之教授、運動器外傷学講座の中田英二准教授、細胞生物学の阪口政清教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Cancer」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

悪性末梢神経鞘腫瘍は非常にまれな腫瘍だが、局所再発および遠隔転移の発生率が高く、5年生存率は、積極的な手術、大量補助化学療法、放射線療法などの集学的治療を行っても、約40%に過ぎないと報告されている。既存の分子標的薬のような代替治療戦略も奏功せず、治療成績の改善はほとんどない。この疾患の患者の予後を改善するためには、新規治療が必要なことは明確であり、そのためには悪性末梢神経鞘腫瘍細胞の浸潤と増殖を支える分子メカニズムを解明することが重要と研究グループは考え、新規治療標的を同定することを目指した。

特に神経系腫瘍で過剰発現のPRRX1、TOP2Aと協調し転移能力高める

近年、胎生期に四肢の形成に重要であると言われているPRRX1が、特定の悪性腫瘍において過剰に発現しているという報告が増えている。研究グループは、特に神経系の腫瘍において悪性にPRRX1が多く発現していることを発見した。次に悪性末梢神経鞘腫瘍の細胞レベルでPRRX1をノックダウン、あるいは過剰発現させることによりPRRX1の働きを解析したところ、PRRX1は細胞の形を変化させ転移しやすい状態になる()ことを確認した。さらにPRRX1のメカニズムを解析すると、PRRX1はTOP2Aというタンパク質と結合することで、協調して転移能力を高めることを新たに発見した。

・TOP2Aタンパク質間相互作用、副作用の少ない新規治療標的となる可能性

TOP2Aは抗がん剤のターゲットとして長く研究されてきたタンパク質であり、現在までに多くの抗がん剤が作られている。しかし、TOP2Aは正常な細胞にも発現しているためさまざまな副作用が問題となってきた。

今回、研究グループはPRRX1とTOP2Aのタンパク質間相互作用を新たに発見したことで、抗がん剤の対象をタンパク質そのものではなく、相互作用のみを阻害することで従来よりも副作用の少ない新規治療標的となる可能性を見出した。さらにPRRX1とTOP2Aの発現が高い悪性腫瘍は今回の研究対象の悪性末梢神経鞘腫瘍だけでなく、膵がんや神経膠芽腫、肺小細胞がんもPRRX1とTOP2Aの発現が高いため、その他の予後不良な悪性腫瘍への応用にも期待される。

悪性末梢神経鞘腫瘍は局所再発や転移率が高く、予後不良な難治性がんの一つである。現在に至っても有効な治療法に乏しい状態が続いている。「今回、悪性末梢神経鞘腫瘍の腫瘍の悪性化に関連するメカニズムの一つを新たに発見したことで、今までにない治療標的となりうる可能性があり、新規治療薬開発につながると期待される」と、研究グループは述べている。

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