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ドラベ症候群の進行性歩行障害、レボドパによる改善を確認-名大ほか

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2024年03月22日 AM09:00

レボドパがドラベ症候群の歩行改善に有効とする症例報告はあるが、有効性の検証はなかった

名古屋大学は3月15日、ドラベ症候群の進行性歩行障害に対するレボドパの有用性を世界で初めて検証し報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄附講座の夏目淳特任教授、小児科学の鈴木健史大学院生(研究当時)、伊藤祐史医員、髙橋義行教授、愛知県三河青い鳥医療療育センター三次元動作解析室の伊藤忠研究員、整形外科の則竹耕治センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Epilepsia」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ドラベ症候群は、有熱時のけいれん重積を特徴とする発達性てんかん性脳症だ。有病率は2万人から4万人に1人とされ、患者の多くでは、ナトリウムチャネルに関わる遺伝子であるSCN1A遺伝子に変異が認められる。てんかん発作は難治に経過することが多く、これまでの研究の多くはてんかん発作のコントロールに関するものだった。最近では、患者の生活の質や日常生活活動度に大きく影響する、進行性の歩行障害にも注目が集まっているが、これまで確立した治療法はなかった。

また、これまで、レボドパが歩行の改善に有効だったとする症例報告はあるものの、その有効性を検証するためのランダム化比較試験はこれまで行われていなかった。研究グループは、歩行を定量的に評価する方法が限られていることがこの理由の一つになっていると考えた。

三次元歩行解析による定量的な歩行評価、ランダム化クロスオーバー試験で検証

三次元歩行解析は、従来整形外科領域で、脳性麻痺の術前後の比較などで臨床応用されてきた。研究グループは先行研究により、小児神経疾患の歩行評価に三次元歩行解析が有用であることを報告してきた。今回の研究は、このような背景に基づき、ドラベ症候群の歩行障害に関して三次元歩行解析による定量的な評価を行い、レボドパの有効性をランダム化クロスオーバー試験で証明することを目的とした。歩行障害を認める6~20歳までのドラベ症候群患者9名を、レボドパ先行群と非レボドパ先行群に割付を行った。レボドパは1日あたり5mg/kg(体重60kg未満)または300mg(体重60kg以上)で4~6週間内服が行われた。

歩容指標・6分間歩行距離など有意に改善、若年・歩行能力が高い症例でより有効

混合効果モデルを用いた評価では、レボドパの内服により、歩容を点数化した指標であるGait Deviation Index、6分間歩行距離、バランステストの結果がそれぞれ統計学的に有意に改善していることが示された。

サブグループ解析を行ったところ、レボドパは若年で、試験組み入れの段階での歩行能力が高い症例でより有効であることが示された。有害事象に関しては、1名が薬剤との因果関係不明の発熱で内服を中止した以外には目立ったものはなかった。以上から、ドラベ症候群の歩行障害に対して、レボドパは有効かつ忍容性の高い治療法となりうると考えられた。

最適な内服量設定や長期的な有効性・安全性の評価へ

歩行に困難を感じているドラベ症候群患者に、レボドパが治療選択の一つとして提示できるようになる可能性がある。加えて、これまで不明な点の多かったドラベ症候群での運動障害の病態解明にもつながることが期待される。今後は、同研究では行えなかった、最適な内服量の設定や長期的な有効性・安全性の評価にも取り組んでいきたい、と研究グループは述べている。

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