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安全な新規「発毛・育毛剤」候補を発見、ケラチンマイクロ球体ゲル-筑波大ほか

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2024年02月26日 AM09:30

ケラチンマイクロ球体ゲルの「」効果を検証

筑波大学は2月16日、毛髪の主成分であるケラチンをマイクロ球体化し、水中に分散させた「ケラチンマイクロ球体ゲル」に、毛包の成長促進効果があることを、マウスを用いた実験により実証したと発表した。この研究は、同大生命環境系の礒田博子教授と数理物質系の山本洋平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「ACS Applied Bio Materials」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

毛髪の成長には、成長サイクルの調整が重要な役割を果たす。毛包の成長サイクルは、成長期(成長)、退行期(退行)、休止期(休止期)の3段階に分かれている。毛包の複雑な三次元構造には、独特の生化学的、代謝的、免疫学的特性が含まれており、毛包は、物質が皮膚のより深い層に入る経路として機能する。したがって、発毛・育毛を促進するには、毛包に有効成分を届けることが重要だ。

現在、利用可能な脱毛治療薬としては、FDA(アメリカ食品医薬品局)が承認したミノキシジルなどがあるが、これらは部分的な治療効果しか見られない上、副作用が大きな問題となっており、特に女性や子どもへの投与は大きく制限されている。一方、皮膚と毛包の機能は、ケラチン発現の制御に依存していることから、広範囲の皮膚および毛髪疾患における新規治療戦略の開発において、ケラチンに大きな関心が寄せられている。

ケラチンは、上皮細胞および表皮のさまざまな層に見られるタンパク質。皮膚と毛包細胞の両方の生理学的および病理学的状態を反映する独特の遺伝子発現パターンを示し、表皮のタンパク質の約30%、毛包タンパク質の90%以上を構成する。毛包前駆細胞の維持と活性化は、さまざまなケラチン発現パターンのホルモン調節の影響を受けることが知られている。近年、毛髪由来のケラチンから作られたマイクロニードルパッチが毛髪の再生を促進するために使用されているほか、組換えヒト毛髪ケラチンナノ粒子が皮膚の創傷治癒を促進することが報告されている。そこで研究グループは今回、マイクロ球体化したケラチンを用いて、その発毛・育毛効果を調べた。

ケラチンマイクロ球体ゲル塗布後約2週間でマウスの毛が生え揃う、粉末では効果なし

研究では、羊毛由来の水溶性酸化ケラチンをスプレーミスト法でマイクロ球体化し、これを水中に再分散させた球体ゲル(ケラチンマイクロ球体ゲル)を用いて、剃毛したマウスの背中に塗布したところ、塗布2日目には発毛が観測され、約2週間の塗布でほぼ完全に毛が生え揃った。この発毛・育毛のペースは、ミノキシジルの水溶液を使用した際に観察される効果とほぼ同等だった。

一方、水に不溶なケラチン粉末の水分散液を塗布した場合には、発毛・育毛の効果はほとんど観測されなかった。

培養表皮モデルでケラチンマイクロ球体ゲルの「毛乳頭細胞活性化」作用を確認

発毛したマウスの背中の細胞について遺伝子診断を行った結果、毛包の発達やケラチノサイトの分化に関与する「Notch1」、メラノサイト幹細胞分化や毛包形態形成、毛周期過程、線維芽細胞増殖のポジティブ因子に関与する「Ctnnb1」、毛髪成長サイクルやメラノサイト・ケラチノサイトの接着・分化に関与する「Cadherin」、細胞周期や増殖、Notch1およびAKT経路の制御に関与する「K14」など、発毛・育毛に関連する遺伝子の発現が、対照実験に使用したマウスと比較して、優位に促進されていることが明らかになった。

さらに、ヒト由来の培養表皮モデルLabCyte EPI-MODELを上側、ヒト初代毛乳頭細胞を下側で共培養した皮膚モデルを構築し、ケラチンマイクロ球体ゲルの皮膚透過性を介した毛乳頭細胞の活性化作用を、遺伝子発現解析により確認した。

副作用がほとんどない発毛・育毛成分としての応用に期待

今回の研究により、ケラチンをマイクロサイズに球体化して皮膚に塗布することで、発毛・育毛の促進効果が得られることが明らかになった。

「ケラチンは毛髪や皮膚の主成分であることから、このケラチンマイクロ球体ゲルは、副作用がほとんどない発毛剤や育毛剤、養毛剤などとしての応用が期待できる」と、研究グループは述べている。

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