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リンパ腫に対する臍帯血移植、予後改善につながる予測因子判明-京大ほか

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2023年12月22日 AM09:30

同種造血幹細胞移植に代わる臍帯血移植、日本の実施件数は世界最多

京都大学は12月19日、日欧におけるリンパ腫に対する臍帯血移植の予後予測因子を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院の諫田淳也講師、渡邊瑞希病院助教、日本造血細胞移植データセンターの熱田由子センター長(兼:愛知医科大学教授)、ユーロコードÉliane Gluckman教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood Advances」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

抗がん剤治療に抵抗性を示す、あるいは再発する可能性が高いリンパ腫に対して、同種造血幹細胞移植は、移植されたドナーの免疫細胞による抗腫瘍効果(移植片対腫瘍効果)により根治が期待できる免疫療法である。HLAを適合させることが、ドナーの免疫細胞が免疫応答によって患者の臓器を攻撃することによる移植片対宿主病()などの免疫学的な合併症リスクを低下させるため、HLA適合血縁・非血縁者が最も良いドナーと考えられているが、HLA適合ドナーが見出せない、あるいは適切な時期に得られないこともしばしば経験する。

臍帯血は、HLA一致ドナーに代わる代替移植ソースとして確立した。特に日本において、臍帯血移植は積極的に行われており、2022年度には1,335件(日本で実施された非血縁者間同種移植全体の56%)実施された。臍帯血移植件数は世界中で最も多く、日本が世界をリードしている。また、HLA適合非血縁者間骨髄移植とほぼ同等の成績であることも示されている。

生着不全や早期移植関連合併症の頻度などから、海外では臍帯血移植件数は減少傾向

移植後にシクロホスファミドを用いたHLA不適合血縁者間移植が比較的安全に実施できるようになり、代替移植ソースとしての臍帯血の役割は変化しているが、臍帯血は、他の適切なドナーが適時に入手できない場合に優れた代替移植ソースであり、臍帯血移植の治療成績を向上させることは非常に重要である。

一方、海外においては、臍帯血移植は、生着不全や早期の移植関連合併症の頻度が他の移植ソースと比較しやや高いことが問題となり、移植件数が減少している。臍帯血移植の成績をさらに改善するためには、国際共同研究が非常に重要と考えられる。

国際共同研究により、日欧のリンパ腫に対する臍帯血移植の特徴と予後予測因子を解析

この問題に取り組むため、日本造血・免疫細胞療法学会、日本造血細胞移植データセンター、欧州臍帯血研究施設であるユーロコード、欧州血液骨髄移植学会による国際共同研究を行い、共同研究基盤を確立し、これまでに、急性白血病に対しては、国際共同研究にて臍帯血移植の予後予測因子やGVHDが予後に及ぼす影響を明らかにしていた。今回の研究では、日欧のリンパ腫に対する臍帯血移植の特徴と予後予測因子を解析し、今後の治療戦略と予後改善に生かすことを目的とした。

疾患リスクは生存率に関与、TBI含む前処置は有効、HLA不適合の負影響は欧州で強い

2000年から2017年に初回臍帯血移植を受けた18歳から75歳のリンパ腫の患者を対象とした(欧州:単一臍帯血移植、192人、複数臍帯血移植、304人、日本:単一臍帯血移植、1,150人)。ホジキンリンパ腫の患者割合は欧州で高く(26%vs.5%)、成熟T/NK細胞リンパ腫の患者割合は日本で高い結果だった(20%vs.35%)。日本のコホートでは、高齢患者(50歳以上)の割合が高く(59%vs.39%)、疾患リスク指数の高リスク群の割合が高い結果だった(49%vs14%)。疾患高リスクは、日欧関わらず生存率低下と関連し(欧州:ハザード比1.87、p=0.001、日本:ハザード比2.34、p=0.001)、リンパ腫再発・増悪と関連していた(欧州:ハザード比2.04、p=0.007、日本:ハザード比2.96、p<0.001)。全身放射線照射(TBI)を含む移植前処置レジメンは、欧州、日本ともに生存の延長に寄与した。生存に対するHLA不適合数(2以上vs.2未満)の負の影響は欧州でより強く認められた(欧州:ハザード比1.52、p=0.007、日本:ハザード比1.18、p=0.107)。

患者、疾患、移植の特徴が異なるにもかかわらず、リンパ腫に対して臍帯血移植を受けた患者の疾患リスク指数が高い患者は、日欧ともに生存率は低い結果だった。また、全身放射線照射はいずれにおいても移植前処置に含める必要があると考えられる。HLA不適合が生存に及ぼす影響の違いは、人種における免疫学的差異を示唆しているかもしれない。

リンパ腫における日欧の臍帯血移植の特徴が明らかに、小児臍帯血移植についても解析予定

この研究では、リンパ腫における日欧の臍帯血移植における特徴が明らかとなり、HLAの意義が日欧で異なる可能性を示した。また全身放射線照射を移植前処置に組み込むことの重要性が示されると同時に、日欧関わらず適切な患者を選択することで、良好な成績が得られることが示された。「本研究データをもとに、国際共同介入試験を計画する予定である。また、今回は成人リンパ腫を対象に解析したが、小児臍帯血移植における影響は明らかとなっておらず、今後も研究を進めていく」と、研究グループは述べている。

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