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花粉症のアレルギー性結膜炎、青魚内臓に豊富なEPA代謝物で症状緩和の可能性-東大

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2023年09月28日 AM10:57

EPA代謝物の5,6-DiHETEは炎症反応抑制、花粉症による目の症状にも有効か

東京大学は9月26日、ω-3脂肪酸EPAの代謝物5,6-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid(5,6-DiHETE)が、アレルギー性結膜炎の症状を抑制することを、マウスモデルを使って明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授の研究グループによるもの。研究成果は「Frontiers in Pharmacology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

アレルギー性結膜炎は、結膜でアレルギー性の炎症が起こる疾患。花粉などの抗原に感作された結膜が、再度抗原に暴露されると、マスト細胞と呼ばれる免疫細胞が抗原を認識して活性化し、ヒスタミンやセロトニンなどの強い炎症を引き起こす物質を大量に放出する。これが周囲の血管の内皮細胞や神経を刺激して、血管透過性の亢進による結膜の炎症や浮腫、涙の量の増加、かゆみなどの症状が起こる。また、マスト細胞や周囲の細胞から産生されたサイトカインが、好酸球などの免疫細胞を呼び寄せることで、炎症が慢性化していく。

アレルギー性結膜炎の治療には、抗ヒスタミン薬や抗炎症性ステロイド薬が処方される。しかし、抗ヒスタミン薬だけでは慢性的な炎症を完全に抑えられず、ステロイド点眼薬には眼圧が上昇するなどの副作用がある。かゆみを伴うつらいアレルギーの症状を抑えることができる、副作用の少ない治療・管理方法の開発が求められている。

これまでに研究グループは、マウスモデルを用いた検討において、炎症が治るときに組織の中で産生濃度が上昇する脂質として、EPAの代謝物である5,6-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid(5,6-DiHETE)を見出し、この物質が炎症反応を抑える働きをもつことを発見してきた。詳細な検討によって、5,6-DiHETEはアレルギー性炎症やかゆみの増悪に関与するマスト細胞や血管、神経に多く発現しているTRPV4チャネルの活性を抑えるはたらきをもつこともわかっている。そこで今回の研究では、患者が急激に増えている花粉症で起こるアレルギー性結膜炎に対する5,6-DiHETEの治療効果を検討した。

モデルマウスに5,6-DiHETEを腹腔内投与、ステロイドと同等の強さで症状を抑制

研究グループは、マウスの皮下にブタクサ花粉(花粉)を2回投与して体内に抗花粉抗体を作り、その後10日目から5日間、1日1回、花粉を点眼してアレルギー性結膜炎を引き起こした。花粉点眼の直前に300µg/kgの5,6-DiHETEを腹腔内に投与した。陽性対照として2mg/kgの抗炎症性ステロイド(;DEX)を用いた。花粉刺激の最終日に、まぶたの腫れ、発赤、流涙の程度(シルマーテスト)の症状を評価した。

その結果、花粉の刺激により症状は悪化したが、5,6-DiHETEの投与はこの症状を抑えた。その抑制の程度は抗炎症性ステロイド(DEX)と同等の強いものだった。また、花粉刺激15分後の涙の量も花粉投与により増加したが、5,6-DiHETE投与はこれを抑制した。

マスト細胞活性化および好酸球浸潤の抑制も確認

結膜組織のMay-Grünwald-Giemsa染色を行い、顕微鏡下で観察した。花粉刺激によりマスト細胞の活性化(脱顆粒率)と好酸球の浸潤数増加が観察されたが、5,6-DiHETEの投与は、これらの増加を抑制した。症状と同様に、5,6-DiHETEの涙の量やマスト細胞の活性化、好酸球浸潤に対する抑制効果は、抗炎症性ステロイド(DEX)と同様であり、強力なものだった。以上の結果から、5,6-DiHETEが花粉誘発性のアレルギー性結膜炎の症状を強く抑制することがわかった。

点眼でも涙の量の増加と血管透過性の亢進を抑制

次にメカニズムの解明を進めた。5,6-DiHETEが花粉刺激によるまぶたの腫れや涙の増加を抑制したことから、5,6-DiHETEがヒスタミンによる血管透過性と神経の興奮を抑制していると考え、ヒスタミンを投与した際に起こる眼の炎症に対する5,6-DiHETEの治療効果を調べた。

マウスに4µgのヒスタミンを点眼することで結膜炎を起こし、ヒスタミンを点眼する15分前に300µg/kgの5,6-DiHETEを腹腔内投与した。陽性対照として抗ヒスタミン薬であるケトチフェン(Ket)を10mg/kg腹腔内投与した。ヒスタミンを点眼して15分後に、涙の量をシルマーテストで評価した。また、予め静脈内へ注射した色素の結膜への漏出量を指標に、結膜における血管の透過性を評価した。その結果、ヒスタミン点眼により涙の量と血管透過性が増加したが、5,6-DiHETEの投与はこれらの増加を抑えた。その程度は一般薬として現在使われているケトチフェンと同程度の強いものだった。

続いて、実際の使用を想定して、点眼での5,6-DiHETEの効果を検討した。ヒスタミンを8µg点眼し、その45分前と15分前に、1µgの5,6-DiHETEを点眼した。陽性対照にケトチフェンを0.1µg点眼した。その結果、5,6-DiHETEは点眼でもヒスタミン誘発性の涙の量の増加と血管透過性の亢進を抑制しました。その抑制の程度はケトチフェンと同程度だった。

続いて、実際の使用を想定して、点眼での5,6-DiHETEの効果を検討した。ヒスタミンを8µg点眼し、その45分前と15分前に、1µgの5,6-DiHETEを点眼した。陽性対照にケトチフェンを0.1µg点眼した。その結果、5,6-DiHETEは点眼でもヒスタミン誘発性の涙の量の増加と血管透過性の亢進を抑制しました。その抑制の程度はケトチフェンと同程度だった。

5,6-DiHETEはマスト細胞の脱顆粒と血管透過性の亢進、かゆみをそれぞれ抑制

かゆみはアレルギー性結膜炎の特徴的な症状の1つであり、かゆみに悩まされている人は非常に多いことが知られている。痒み物質であるセロトニンをマウスのほほに皮内投与した後、30分間ビデオで撮影して引っ掻き行動の回数を数えたところ、引っ掻き行動の増加が観察された。300µg/kgの5,6-DiHETEをセロトニン投与の直前に腹腔内投与したところ、この引っ掻き行動が抑制された。陽性対象として、痒みを伝達する神経を抑えるTRPV4阻害剤HC-067047を20mg/kg投与した場合も、同様に引っ掻き行動が抑えられた。

これらの結果から、5,6-DiHETEがマスト細胞の脱顆粒と血管透過性の亢進、かゆみをそれぞれ抑制することで、マウスの花粉誘発性のアレルギー性結膜炎の症状を抑制することがわかった。これらアレルギー反応急性期に起こる炎症反応のみならず、5,6-DiHETEは、好酸球の浸潤も抑制したことから、慢性炎症に対する治療効果も示唆された。

5,6-DiHETEは青魚の内臓に多く含まれることが分かっている。「これらを抽出し、食べたり飲んだりすることで、花粉症の症状を和らげる技術の開発を今後進める。この技術によりアレルギーに苦しむ患者のQOL改善に貢献していきたい」と、研究グループは述べている。

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