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妊娠初期のQOL、「過去の流産経験」で低下の可能性-富山大ほか

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2023年07月26日 AM11:16

エコチル調査参加の妊婦約8万人対象、流死産回数と妊娠中QOLとの関連を調査

富山大学は7月24日、過去の流死産回数が多いほど妊娠初期の身体的なQOLが低くなること、流死産歴がある妊婦は流死産歴が無い妊婦と比較して妊娠後期に向けて身体的なQOLがより向上することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究部医学系母性看護学講座の二川香里准教授らのグループによるもの。研究成果は、「BMC Pregnancy and Childbirth」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本では妊娠22週未満の妊娠の終了を流産と呼び、頻度は全妊娠の10~15%と言われ、流産を2~3回以上繰り返した場合は「不育症」と診断される。不育症女性は、次に妊娠した時に、また流産をするのではないかという不安や恐怖を抱きやすく、妊娠を喜んだり周囲に妊娠を報告したりすることもなかなかできないという経験をする。また、過去の研究で、妊娠初期には不安が強くなり抑うつになりやすいとも報告されている。

一方、妊娠中は体調や精神状態の変化も大きいためか、妊婦は妊娠してない女性と比べQOLが低いことが知られている。また、流死産歴がある妊婦は流死産歴が無い妊婦と比較してQOLが低いことが明らかにされている。ただし、このような研究は妊娠経過のある1時点のQOLのみを報告したものであり、過去の流死産回数が、次の妊娠中の妊娠初期と妊娠中後期にかけてのQOLの変化にどのように関係するかは十分に検討されていない。

そこで研究グループは今回、「」に参加している妊婦8万2,013人を対象に、過去の流死産回数と妊娠中のQOLとの関連を調べた。

流死産経験は、次の妊娠において妊娠初期の身体的QOLを低下させる

QOLの評価については、8つの質問項目からなる「健康関連QOL Short Form-8 日本語版(SF-8)」を使用した。8つの質問項目は、身体的なQOLに関する質問4つと精神的なQOLに関する質問4つから構成されている。平均的なQOLの人が50点になるように作られており、点数が高いほどQOLは高い(より健康)とされている。

解析では、妊婦を過去の流死産回数により、無し群、1回群、2回群、3回以上群の4群に分けた。妊娠初期におけるSF-8の身体的QOLと精神的QOL得点を、無し群と1~3回以上群それぞれで比較し、妊娠初期から妊娠中後期にかけてのSF-8の身体的QOLと精神的QOL得点の変化についても、無し群と1~3回以上群それぞれで比較した。また、初産婦と経産婦に分けても同じようにSF-8の身体的QOLと精神的QOL得点を比較した。妊婦の年齢や合併症、既往歴、婚姻状況、世帯収入、最終学歴、飲酒歴、喫煙歴などを調整変数として、一般線形混合モデルを使用して分析した。

解析の結果、流死産無し群と比較して、1回群、2回群、3回以上群は妊娠初期の身体的QOL得点が有意に低く、流死産回数が多いほど点数は低くなっていた。また、全ての群において、妊娠初期から妊娠中後期にかけて、身体的QOLと精神的QOLとも得点は上昇していた。身体的QOLに関しては、無し群と比較して1回群と3回以上群は得点が有意に上昇していた。

経産婦は、妊娠初期の精神的QOLも低下

また、経産婦の妊娠初期における身体的QOLに関しても同様に、流死産回数が多いほど有意に得点が低かった。また、精神的QOLにおいても1回群は流死産の経験がない群に比べて、有意に得点が低かったという。

流死産歴がある妊婦、妊娠後期は身体的QOLが向上

以上のことから、過去の流死産経験は次の妊娠において妊娠初期の身体的QOLを低下させること、経産婦においては妊娠初期の精神的QOLも低下させることがわかった。また、流死産歴のある妊婦の妊娠初期の身体的QOLが低かったとしても、妊娠経過とともに上昇することも判明した。

流死産経験のある妊婦の妊娠初期は「日常生活での影響」という視点を加えた支援が必要

今回使用したSF-8では、身体的QOLについて「身体を使う日常的な活動や仕事をすることが、身体的な理由でどのくらい妨げられたか」を問うている。このことから、流死産歴のある妊婦さんは妊娠初期に流産になることを恐れ、できるだけ身体的活動を少なくし安静にしているのではないかと考えられ、そのことがQOLに影響を及ぼしている理由ではないかと推測した。また、流死産歴のある経産婦の場合は、妊娠初期に流産の不安や恐怖を感じながら上の子の育児をする必要があることにストレスを感じているかもしれないという。

「流死産経験のある妊婦の妊娠初期には、身体的活動の程度を確認し、日常生活に影響していないかという視点も加えた支援の必要性が示唆された。一方、本研究の限界として、妊娠中後期の調査が平均して妊娠27週の時点であり、厳密に妊娠中期と後期が定義されていないこと、また観察研究であるため、多くの交絡因子を調整しているが、因果関係までは扱えていないことなどが挙げられる」と、研究グループは述べている。

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