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作業療法における集団作業の効果、心電図と脳波を用いて実証-大阪公立大ほか

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2023年07月24日 AM10:59

作業療法として有効とされる「他者存在の場での手工芸活動」、具体的な効果は?

大阪公立大学は7月20日、作業療法で用いられている集団や手工芸活動などの治療効果を、脳波による集中の指標と心電図による自律神経活動の指標で分析した結果を発表した。この研究は、同大リハビリテーション学研究科の大類淳矢大学院生(博士後期課程2年、大阪保健医療大学助教)、石井良平教授、大阪河﨑リハビリテーション大学の白岩圭悟助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neuropsychobiology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

作業療法の特徴的な点として、手工芸活動や集団もその治療構造に含むことが挙げられる。集団で作業を行うことにより、幸福感や自己効力感が高まることや、日常生活がスムーズに改善することなどが報告されている。しかし、その生理学的な効果ははっきりと示されていなかった。一方、手工芸活動を単独で行うことで、リラックスかつ集中した状態を導くことが、脳波Fmθと自律神経活動の観点から明らかになっている。この先行研究では、手工芸活動中に集中状態の指標となる脳波Fmθが出現する人は、副交感神経活動も高まっていた。

そこで、今回の研究では、集団で作業を行うことは、生理学的にどのような有用性があるのかを、脳波と自律神経活動の観点から検討した。特に、臨床の精神科作業療法でよく用いられる「パラレルな場」という他者が存在しながらも各自の作業を行う環境に着目し、その効果を示すことを目指した。

2人で各自の作業実施は1人で実施より副交感神経活動が有意に高まる

研究では、健常者30人を対象として、手工芸活動(ネット手芸)中の脳波と自律神経活動を測定。1人(1人で手工芸)、並行(各自の作業)、非並行(1人が手工芸、非作業者は観察者)の3条件で測定した。

その結果、リラックス効果を表す副交感神経活動は、1人より2人(各自の作業)で有意に高まることが明らかになった。条件によって、手工芸活動の進み具合は変わらなかったという。

1人が作業1人が観察では、脳波Fmθが出現した人で副交感神経活動が有意に高まる

また、2人(各自の作業/非作業者は観察者)の手工芸活動において、集中状態の指標となるFmθが出現した人は、出現していない人より副交感神経活動が有意に高まることも明らかになった。条件によってのFmθの出現頻度は差がなく、全て同じ程度にFmθが出現していたとしている。

作業療法での並行条件設定、緊張や不安の軽減に寄与の可能性

今回の研究により、作業療法において並行条件を設定することはリラックスの観点で有効である可能性を示した。このことは、臨床現場において緊張や不安が強い対象者への作業療法では、並行条件を設定することがそれらの軽減に効果を有する可能性を示唆している。今後は、精神疾患を有する方を対象として、また3以上の集団での実験など、集団で作業療法を実施することの効果をさらに検討し、対象者の特性に応じた手工芸や集団の提供方法を具体化していきたいと考えている、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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