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血液透析患者の石灰化弁尖数が大動脈弁狭窄症の発症と死亡予測に有用と判明-名大ほか

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2023年03月02日 AM10:48

大動脈弁の石灰化弁尖数は、石灰化の進行度を示す指標になるのか?

名古屋大学は2月28日、大動脈弁の「石灰化弁尖数」が、その後の大動脈弁狭窄症の発症および死亡を予測する有用な評価指標であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腎臓内科学の倉沢史門助教、今泉貴広特任助教、丸山彰一教授らの研究グループと、医療法人偕行会グループ(名古屋共立病院 春日弘毅副院長)との共同研究によるもの。研究成果は、「European Heart Journal-Cardiovascular Imaging」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

腎不全で血液透析療法が必要な患者は全国で30万人を超えている。血液透析患者はさまざまな要因により、石灰化が心臓の弁や血管に生じやすいことが知られている。心臓の大動脈弁の石灰化が進むと弁の動きが制限され、血液が通過しづらくなることで全身に血液が送られにくくなり、心臓にも負担のかかる「」が引き起こされる。これは命に関わる重大な病気だが、進行を止める治療法は確立されておらず、唯一の治療法である大動脈弁置換術も血液透析患者では成績があまり良くない上、全身状態が悪く手術を受けることができない患者も多いのが現状だ。そのため、どのような特徴を持つ患者で特に石灰化が進みやすいのかを明らかにし、石灰化の進行を食い止めるための治療法の開発が望まれている。

研究グループはこれまでの研究で、血液透析患者の半分以上の方に大動脈弁の石灰化があり、10人に1人は石灰化による大動脈弁狭窄症を合併していること、大動脈弁狭窄症に至る前の段階の大動脈弁石灰化(大動脈弁硬化症)であっても死亡に関連することを明らかにしている。同時に、大動脈弁の石灰化がどのように進行し、どのような特徴を持つ患者が大動脈弁狭窄症を発症しやすいのかを明らかにするため、さらなる研究が必要と考えた。

大動脈弁には通常3つの弁尖(無冠尖、左冠尖、右冠尖)があるが、石灰化の進行について、3つの弁尖を区別して調べた研究はこれまでになかった。研究グループはこの点に着目し、3つの弁尖のうち何尖に石灰化が見られるか、つまり、大動脈弁の石灰化弁尖数が石灰化の進行度を示す指標になるのではないかと考え、研究を行った。

透析患者の多くは3~4年に1尖ずつ石灰化、石灰化のない患者の大動脈弁狭窄症発症はまれ

研究では、偕行会関連の9施設に通院歴のある1,500人を超える血液透析患者に、最大で約10年余りの期間に繰り返し実施された合計約1万4,000件の心臓超音波検査の結果を詳しく解析し、大動脈弁の3つのそれぞれの弁尖がどのように石灰化していくか、また、石灰化弁尖数が将来の大動脈弁狭窄症の発症や死亡を予測するかを調査した。

その結果、大動脈弁狭窄症を起こす前の大動脈弁硬化症の患者のうち、約半数は大動脈弁1尖のみに石灰化があり、約30%で2尖に石灰化、約20%で3尖全てに石灰化があることが判明した。部位別に見ると、無冠尖の石灰化が最も多く、左冠尖と右冠尖の石灰化は同じくらいの頻度で見られたという。

大動脈弁に石灰化のない状態から初めて石灰化が生じるまでの期間は平均で約6年だった。1尖石灰化→2尖石灰化、2尖石灰化→3尖石灰化と進行するまでの期間は3〜4年であることがわかった。また、3尖石灰化から大動脈弁狭窄症を発症するまでの期間は約4年だった。一方で、3尖全てが石灰化していない患者では、大動脈弁狭窄症を発症することはまれだったという。

石灰化が1尖増えるごとに大動脈弁狭窄症の発症リスク2倍以上、死亡リスク約20%上昇

観察期間中に251人(17%)に大動脈弁狭窄症が発生。発生率(100人/年あたり)は大動脈弁石灰化なし、1尖石灰化、2尖石灰化、3尖石灰化の患者それぞれ1.7、4.8、10.7、19.1で、多変量解析の結果、石灰化弁尖数が1尖増えるごとに大動脈弁狭窄症の発症リスクが2倍以上高くなることがわかった。

(100人年あたり)は石灰化なし、1尖石灰化、2尖石灰化、3尖石灰化の患者それぞれ4.8、7.8、11.6、13.7で、多変量解析の結果、石灰化弁尖数が1つ増えるごとに、死亡リスクが約20%高くなることがわかった。

以上より、大動脈弁の石灰化弁尖数が多いほど、大動脈弁狭窄症、死亡ともにリスクが高くなるということが明らかになった。また、これらの関連について、石灰化の弁尖の部位(無冠尖、左冠尖、右冠尖)の違いよって大きな違いはなかったとしている。

大動脈弁に石灰化を有する患者のリスク層別化や臨床試験の評価指標としての活用に期待

今回の研究結果により、大動脈弁の石灰化の評価においては各弁尖を区別し、何尖に石灰化しているかを評価することが有用であることが明らかにされた。この評価法は、心臓超音波で患者の負担なく簡単に実施できるため、実際の診療で大動脈弁硬化症患者のリスク層別化に役立つ。

「大動脈弁石灰化の進行を抑えるための治療法の開発のための研究が世界中で行われているが、その効果を見る際に石灰化弁尖数を評価項目にするなど、研究面での活用も期待される」と、研究グループは述べている。

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