医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 不適切な換気でCOVID-19エアロゾル感染拡大、クラスター発生の可能性-電通大ほか

不適切な換気でCOVID-19エアロゾル感染拡大、クラスター発生の可能性-電通大ほか

読了時間:約 3分34秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年02月08日 AM10:32

クラスター発生の医療福祉機関・事業所で、再発防止の観点から立ち入り調査を実施

電気通信大学は2月6日、)の集団感染(クラスター)が発生した60か所以上の医療福祉機関・事業所において、再発防止の観点から立ち入り調査を行った結果を発表した。この研究は、同大情報学専攻の石垣陽特任准教授、i-パワードエネルギー・システム研究センターの横川慎二教授ら、宮城県結核予防会、産業医科大学産業医実務研修センター、東京工業大学の研究グループの研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR Formative Research」「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

COVID-19の感染拡大予防のため、「」「飛沫」「接触」という3つの感染経路毎に、複数の対策を講じることが重要とされている。特に、昨今は感染力の強い変異種が蔓延しており、エアロゾル感染への対策の重要性が高まっている。しかし、接触・飛沫感染に比べ、エアロゾル感染は視覚的に認識しにくく、有効な予防策や再発防止策がとられにくいのが現状だ。そこで、エアロゾル感染のリスクを可視化するため、CO2センサーによる室内空気環境の管理が注目されている。

今回、研究グループではCO2センサーをネットワーク状に配置し、測定された時系列データを系統的に解析することで、換気回数やエアロゾルの伝搬経路を可視化することを実証するため、実際にクラスターが起きた現場で再現実験を行った。

気流に乗ったエアロゾルによる風下汚染

研究の結果、エアロゾル感染クラスターには少なくとも2つの異なる種類があることを突き止めた。事例1つ目は、「気流に乗ったエアロゾルによる風下汚染(高齢者施設での事例)」だ。2021年4月までに当該建物内で合計59人の感染者が報告された。このうち、36人が施設の利用者(入所者、日帰り利用者を含む)で、残りの23人が施設職員だった。

研究グループは同年8月にCO2センサーネットワークによる換気と気流の調査を実施。その結果、発端となったと考えられる初期感染者が入居していた個室から、廊下を介して空間的につながっているデイルームに向けて緩やかな気流が発生していることがわかった。この気流はデイルームに設置された大型の換気扇による強い吸引力によるもので、陽性者が居た個室にある換気扇よりも吸引能力が高い。そのため、デイルームと個室で圧力の差が生まれ、結果として感染性のエアロゾルが個室から漏洩し、1分程度でデイルームに到達する可能性があることがわかったという。

デイルームは入居者だけでなく日帰りで施設を訪れる人が自由に利用できる憩いの場であり、被介護者や職員など複数の人が頻繁に利用するため、感染リスクは比較的高かったものと予想される。この施設ではデイルームの利用者を中心に最初の感染が広がったことから、不適切な換気による吸引・漏洩が初期感染につながったものだ、と研究グループは結論づけている。

一般に高齢者施設では、生活の質の向上や入居者の見守りのために開放的な建築空間の設計が推奨されている。しかし、このように相互に接続された空間設計においては、圧力差に配慮した換気設計も同時に求められることが今回の調査で判明した。この高齢者施設において、研究グループではデイルーム近辺の個室の使用を控えると共に、デイルームが陰圧となる機械換気を見直すため、窓開けによる自然換気を併用することを提案。実地調査の後に、新規感染者は発生していない。

送風機・扇風機によるエアロゾルの飛散

事例2つ目は、「送風機・扇風機によるエアロゾルの飛散(工場での事例)」だ。2021年に、1週間に相次いで5人の感染が確認された製造工場の事務室にて、同年11月にクラスター発生時の状況を再現するためCO2トレーサーガス法による換気調査と熱流体シミュレーションを実施。その結果、クラスター発生当時は外部に空気の逃げ場がない状態であり、さらに事務所内に設置された送風機による気流が、発端となった感染者から放出されたウィルスを含むエアロゾルの飛散につながった可能性が高いことがわかった。

そこで、研究グループはこの様子を簡易的に可視化し、リスクコミュニケーションメッセージとして発信するため、研究室内で再現実験を実施した。さらに、送風機は人に当てる、空気をかき混ぜる目的で使用するのではなく、室内の汚れた空気を押し出すように、窓やドアの近くに外向きに設置するように推奨。また、室内で換気の行き届かない淀みがある場合に、その空間に向けて作動させることも有効と考えた。この製造工場では、送風機の配置を変更することでエアロゾルの飛散リスクを下げる対策を提案し、この実地調査の後に新規感染者は発生していない。

送風機・扇風機の設置方法見直し/施設内の気流確認・管理でエアロゾル感染リスク低減

今回の研究結果により、不適切な換気によってエアロゾル感染が拡大し、クラスターの発生要因となる可能性があると考えられた。その対策として、送風機・扇風機の設置方法を見直すことや、施設内での気流の確認と管理を行うことでエアロゾル感染のリスクを低減させることを、研究グループは提言している。

また、今回確立された、「目に見えないエアロゾル感染クラスターの状況を可視化するために、室内の換気状況の測定と評価を系統的に行うことができる多地点CO2センサーネットワークと、時系列データ解析によるクラスター発生現場の分析手法」により、保健所など行政では分析が難しいとされるエアロゾル感染の原因調査と再発防止を、迅速かつ手軽に行うことができると期待されるという。今後、高齢者施設や事業所のみならず、保育施設や子どもの居場所、病院・クリニックにおいても積極的な換気調査を実施する予定だ、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 新規胃がん発生メカニズム解明、バナナ成分を含む治療薬開発の可能性-東大病院ほか
  • 皮膚筋炎に合併する間質性肺炎、治療標的候補としてIL-6を同定-東京医歯大ほか
  • HTLV-1ぶどう膜炎続発緑内障、早期ROCK阻害薬治療が有効な可能性-東京医歯大ほか
  • 働き世代では「血圧高め」の段階から脳・心血管疾患リスク増に-横浜市大ほか
  • 「怒り」を紙に書いて捨てる・裁断すると、気持ちが鎮まることを実証-名大