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変形性関節症の治療標的候補として、長寿タンパク質「クロト-」を同定-名大ほか

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2023年01月13日 AM11:04

根治治療がない変形性関節症、加齢による関節軟骨変化の分子メカニズムは不明だった

名古屋大学は1月11日、加齢に伴い変化する関節軟骨の物理特性に着目し、加齢とともに硬くなった関節軟骨が機械的シグナルを介して長寿タンパク質Klotho(クロトー)の遺伝子発現を制御することで、変形性関節症を誘発することを発見したと発表した。この研究は、同大高等研究院T-GEx育成対象研究者の飯島弘貴YLC特任助教(兼 大学院医学系研究科)と米国ハーバード大学医学部のFabrisiaAmbrosio准教授、、京都大学らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

老化は病であるー2019年、世界保健機関は国際疾病分類ICD-11に「老化関連」という項目を加えた。これによって、老化は予防や治療の対象との認識が広まりつつあり、老化研究の市場規模は2030年までに急拡大するとの試算が出ている。このような背景の下、加齢が主な要因となって生じる加齢性疾患の病態解明や治療法開発が期待されている。研究グループは、当該研究領域を発展させるべく、いまだ根治治療が存在しない関節軟骨疾患である変形性関節症を対象に基礎医学研究を進めてきた。

加齢による関節軟骨の特徴的変化は、細胞外マトリックスの構成成分や構造の変化である。細胞外マトリックスのリモデリングにより、コラーゲン線維の増大やコラーゲン線維同士の架橋形成が生じることで、組織の硬さが加齢依存的に増大する。実際に、原子間力顕微鏡を用いた実験によって、老齢マウスの関節軟骨は若年マウスよりも3〜3.5倍の弾性を有することがわかっている。この加齢に伴う組織の物理特性変化は、異常な機械的シグナル伝達を介して組織細胞の老化や機能低下を引き起こすとされるが、その背景にある分子メカニズムは明らかにされていなかった。

加齢に伴う細胞外基質の変化、DNAメチル基転移酵素を動員しα-Klothoの発現を抑制

研究グループは、長寿タンパク質α-Klothoに着目し、加齢によって発現が減少するα-Klothoの関節軟骨における機能解析を進めてきた。具体的には、関軟軟骨の質量分析やバイオインフォマティクス、遺伝子工学的手法を駆使し、加齢に伴うα-Klothoの発現低下が関節軟骨変性に寄与することを明らかにした。さらに、この加齢に伴うα-Klothoの発現低下は、細胞を取り巻く細胞外基質の物理特性の変化によってDNAメチル基転移酵素が多く動員され、α-Klothoプロモーターメチル化が促進された結果であることも明らかにした。これら一連の研究成果は、細胞外基質の物理特性やその機械的シグナル伝達、α-Klothoが軟骨治療の新規治療標的となる可能性を示すものである。

発見した仕組み、他の加齢性疾患の病態解明にも貢献の可能性

今回の研究では、加齢に伴い硬くなった軟骨組織が長寿タンパク質であるKlothoを低下させ、変形性膝関節症を誘発することを明らかにした。研究成果により、根治治療がいまだ存在しない変形性関節症の病態解明や治療法開発が期待される。また、加齢による組織の硬さ増大は関節軟骨に特化した特徴ではないため、今回の研究成果は他の臓器における加齢性疾患の病態解明にも貢献する可能性がある。「この研究領域をさらに発展させ、老化という世界的課題に立ち向かうためには、組織の硬さに由来する機械的シグナルがα-Klothoを中心とした老化関連因子をどのように制御しているのか、ゲノムワイドなシステムレベルでの俯瞰的理解が不可欠だと考えている。この課題を解決するため、組織工学、ゲノミクス、システム生物学の手法を駆使し、変形性膝関節症をドライブするエピジェネティクス制御機構の全貌解明に挑戦する予定である」と、研究グループは述べている。

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