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ウェアラブルデバイスでの頭部運動測定がめまい症状の診療に役立つ可能性-北里大ほか

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2022年11月17日 AM11:09

イヤホン型ウェアラブルデバイスを用いた医療機関の平衡機能検査の代替方法を考案

北里大学は11月16日、加速度センサを内蔵したイヤホン型ウェアラブルデバイスで頭部運動を追跡するシステムを考案し、その基礎研究を行ったことを発表した。この研究は、同大医学部の藤岡正人教授(分子遺伝学、・頭頸部外科)、慶應義塾大学医学部の山野邉義晴氏(耳鼻咽喉科学、大学院医学研究科博士課程)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Systems」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

平衡機能障害としてのめまいを訴える患者は年齢とともに増加し、65歳以上では人口1,000人あたり男性では25.0人、女性では41.0人と比較的多く(2016年厚生労働省国民生活基礎調査)、生涯有病率は30%と、極めて頻度は高いと言われている。東京消防庁救急相談センターへの受診相談者の4.1%(第6位)がめまいであり、本来、医学的には急を要さないことも多いめまい症状に、医療資源が多く割かれているのが現状だ。

めまいのほとんどは内耳疾患が原因で、その症状はしばしば変動し反復する。診療においては、患者のめまい症状の推移を正確に把握することが重要だが、医療機関で計測できる各種検査(重心動揺検査など)は受診時における単発の検査のため、日常生活での症状は主観的な患者の訴えに頼らざるを得ず、医療者側が客観的にめまい症状の程度や変動、その推移を評価することは困難だった。

一方で近年、眼鏡型や腕時計型をはじめとする、身体の一部に装着して心拍数や酸素飽和度などの生体データを取得する「」が急速に普及している。これらのデバイスは長時間継続して生体データを取得可能であり、たとえばApple社のApple Watchによる心電図アプリのように汎用性もあるため、世界中でデバイスを利用した医学研究が行われている。

そこで研究グループは今回、病院外におけるめまい症状を経時的に追跡する客観的検査の確立を目的として、加速度センサなどを内蔵するイヤホン型ウェアラブルデバイスを装着し頭部運動を追跡することで、医療機関における平衡機能検査を代替する方法を考案した。この方法により、頻回に測定できない医療機関での検査に代わり、患者が悩むめまい症状の頻度や強さを客観的に評価することが可能と考えられる。

頭-からだ-足の運動を単純化した物理的モデルで医療機関での平衡機能検査に相当し得るか検討

研究では、病院の外で平衡機能検査評価を幅広く行うため、手軽で汎用性のあるウェアラブルデバイスとして、加速度センサを内蔵するイヤホン型デバイスを選択した。ゲームや立体音響などで汎用されるこのデバイスでは、「頭の揺れ(頭部動揺)」を測定することが可能である一方、頭部動揺が本来の「からだの揺れ(体平衡動揺)」や、医療現場で測定する「足圧中心の揺れ(重心動揺)」を反映しているかについては、これまで十分に検討されていなかった。

そこでまず、頭-からだ-足の運動を単純化した物理的モデルを用いて、頭部運動を測定することが病院の平衡機能検査に相当し得るかを検討。すなわち、三脚を人体に見立て、頭部に相当する部分をウェアラブルデバイスで、足部の重心の運動を医療機関で使用される重心動揺計で同時測定し、双方で計測される測定量の関係性を比較した。

ウェアラブルデバイスによる頭位動揺測定が、医療機関の重心動揺検査の評価と同様に利用できる可能性

解析の結果、ウェアラブルデバイスを用いて計測した頭部運動と重心動揺計で計測した足部の重心の運動について、正の相関性があることが判明した。

同結果は、広く市販されているウェアラブルデバイスでも適切な信号処理を加えることで、患者の平衡障害を経時的に測定し、変動するめまい症状の全貌を追跡することができ、ウェアラブルデバイスを用いた病院外における頭位動揺の測定が、医療機関で行う重心動揺検査の評価と同じように利用できる可能性を示している。

変動性内耳障害の診断やヘルスケアのみならず、治験にも役立てていく予定

今回の研究を進めることで、変動するめまいなどの内耳疾患の症状変動に対する理解が進むと考えられる。今後は、メニエール病や更年期障害、起立性低血圧などの変動性内耳障害患者における計測を検討し、将来的には病院外におけるめまい症状の記録から疾患の診断を行うことを目指すとしている。

近年、臨床試験・治験におけるデータ取得をさまざまなデバイスを活用して自宅で行うことが急速に増えてきた(DCT:Decentralized Clinical Trial)。変動する難聴・めまい症状の治療法に関する臨床研究を進めてきたが、本研究成果をこのような臨床試験における治療法の有効性評価に活用することで、患者の病状の経時的変化を追跡し、診断やヘルスケアのみならず治験にも役立てていく予定だ、と研究グループは述べている。

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