医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 急性期脳梗塞に対する再開通療法の医療の質は継続的に向上、全国規模調査で-国循

急性期脳梗塞に対する再開通療法の医療の質は継続的に向上、全国規模調査で-国循

読了時間:約 2分52秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年08月18日 AM10:46

急性期脳梗塞の医療の質指標の遵守率、転帰などをDPCデータで調査

国立循環器病研究センターは8月16日、日本の急性期脳梗塞に対する医療の質の年次推移や臨床転帰に与える影響を評価し、ガイドライン遵守率が退院時のアウトカムに影響することを明らかにしたと発表した。この研究は、「」の、全国レベルで系統的に急性期脳卒中医療の質を計測し改善を促すプロジェクト「Close The Gap-Stroke(略称:CTGS)」において、同センター脳卒中・循環器病次世代医療研究部の連乃駿医師、予防医学疫学情報部の尾形宗士郎室長、飯原弘二病院長らが行ったもの。研究成果は、「Stroke」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

(Quality of Care)を測り、改善することは、世界的に注目されている。一般的に、医療の質は、ストラクチャー指標(構造指標:集中治療室、専門医数など)、プロセス指標(手順指標:ガイドラインに記載された標準的医療の実施など)、アウトカム指標(成果指標:死亡率など)の3つによって測ることができる。中でも、プロセス指標を測ることは医療の質の改善を直接反映すると考えられている。

急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法は、2015年以降の複数のランダム化比較試験により、内科的治療に優る転帰改善効果が示され、標準的治療として確立された。しかし、日本において血栓回収療法に関して、エビデンスに基づいた標準的なプロセス指標は確立されていない。また一般に、プロセス指標を継続的に全国レベルで収集することは、多忙な臨床現場にさらに負担を与える可能性がある。

研究グループはこれまでに、脳卒中に対する標準的医療の実施を推奨するCTGSプロジェクトを開始し、既存のDPC情報(診療報酬の包括評価制度)を活用し、必要な重要情報のみを付加する、プロセス指標の革新的な収集手法を確立し、その実現可能性を報告した。

今回、脳卒中医療の質指標の遵守率を調査し、急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法のためのガイドラインが改定された2015年前後での遵守率の変遷を示すとともに、医療の質指標の遵守が臨床転帰に与える影響を検討し、エビデンスに基づき策定した評価指標がアウトカムに与える影響を、全国レベルで初めて検証した。

来院から血栓回収療法を開始するまでの時間短縮、有効再開通の達成が向上、死亡率低下

研究への参加に同意した351施設において、2013~2017年度に急性期再開通療法(rt-PA静注療法ないし血栓回収療法)を実施した2万1,651症例を対象として、2015年前後での評価指標に対する遵守率の推移、医療の質の指標の遵守が臨床転帰(退院時死亡・機能予後)に与える影響を解析した。

臨床転帰との関連を評価し得た医療の質の指標20項目のうち、14項目は、院内死亡率の低下(Odds[95%CI]、来院からrt-PA静注療法開始までを60分以内に達成すること、0.80 [0.69–0.93]、来院から血栓回収療法を90分以内に開始すること、0.80 [0.67-0.96]、有効再開通の達成、0.40 [0.34–0.48] など)に関連しており、11項目は退院時の機能的自立の増加に関連していることが明らかとなった。

2015年前後で医療の質の指標の遵守率の差分の差を評価したところ、2015年以降、来院から血栓回収療法を開始するまでの時間の短縮や有効再開通の達成など、主に血栓回収療法に関する項目で持続的かつ顕著な遵守の向上が見られた。対象となった症例の死亡率は2013年~2017年度までで10%程度から8%まで低下していた。一方、退院時の自立度は対象患者の約38%程度であり、年次変化は認められなかった。また、適切な退院時処方による二次予防に関する項目は年次変化がほとんど認められなかった。

今後、退院後の再発や自立度の推移を含めた長期的予後の評価を

今回の研究により、日本初の全国的な脳卒中医療の質改善プログラム、CTGSプロジェクトで収集した急性期脳卒中医療の質が、ガイドライン改訂前後5年間で継続的に改善し、遵守率が退院時のアウトカムに影響することが初めて明らかになった。研究グループは、「2015年以降で血栓回収療法に至る時間や有効再開通率の継続的向上が達成できていることから、血栓回収療法の技術的習熟および技術の均てん化が成し遂げられていたと考えられる。一方、院内死亡率の低下は達成できているものの、退院時自立度の改善に至るまでは認められなかったことから、退院後の再発や自立度の推移を含めた長期的予後に関しても今後評価が必要」と述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか