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原因不明の習慣流産、胎盤組織のDNAメチル化プロファイルに違いを発見-名大ほか

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2022年08月01日 AM10:58

習慣流産の25%は原因不明、原因究明と予防が喫緊の課題

名古屋大学は7月28日、原因不明習慣流産患者の絨毛のDNAメチル化プロファイルは、正常妊娠と異なっていることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科・腫瘍生物学分野の近藤豊教授、新城恵子講師、名古屋市立大学大学院医学研究科・産科婦人科学分野の杉浦真弓教授、松本洋介病院助教(筆頭著者)らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」誌にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

習慣流産は3回以上連続する流産と定義されており、その頻度は1.1%である。その原因には、抗リン脂質抗体症候群(自己免疫疾患)、先天子宮異常、カップルの染色体異常、胎児(絨毛)染色体異数性があるが、25%は原因が明らかではない。流産を何度も繰り返すことは非常に辛い経験であり、少子化の現代で習慣流産の原因究明とその予防は喫緊の課題である。

胎児要因と母体要因の両方からエピジェネティクスの影響を調査

胚発生において、受精が成立後早期の段階でエピジェネティック・リプログラミングと呼ばれるダイナミックなDNAメチル化の変化が起こり、種々の組織へ分化・成長していくことがわかっている。近年、このエピジェネティクスに着目し習慣流産の原因を究明しようとした研究が散見されるが、胎児由来である絨毛と、母体由来である脱落膜を同時に解析した研究はなかったという。今回研究グループは、胎児要因と母体要因のどちらがより大きな影響を及ぼすか調べるために、習慣流産患者の流産時に絨毛と脱落膜を採取し、同時に網羅的なDNAメチル化解析を行った。

絨毛では正常妊娠群とのDNAメチル化率に違い

対象として習慣流産患者5名、コントロールとして人工妊娠中絶女性(正常妊娠)5名を抽出し、胎盤組織を胎児由来である絨毛と、母体由来である脱落膜とに分け、網羅的なDNAメチル化を解析した。習慣流産群とコントロール群でDNAメチル化率に差のあった遺伝子のプローブを抽出し、階層型クラスター分析を行ったところ、絨毛では2群間できれいにクラスターが分かれたのに対し、脱落膜ではクラスターが分かれず2群間の症例が入り交じっていた。

メチル化率の差が大きいSPATS2L、そのタンパク質発現低下は胚の発育に関与

そこで、2群間でメチル化率の差が大きい遺伝子を抽出し、症例数を各群19例に増やして個別領域のDNAメチル化を解析した。SPATS2Lを代表とする3つの遺伝子のエンハンサー領域において、2群間で有意にDNAメチル化率が異なっていた。SPATS2LのDNAメチル化率は驚くべきことに妊娠週数と相関していた。

次に、絨毛組織でSPATS2Lの免疫染色を行った。2層構造を取る絨毛膜の内側を構成する、細胞性栄養膜細胞の細胞質において、習慣流産群でSPATS2Lタンパク質の発現が低下していることを発見した。さらに、栄養膜細胞の細胞株を用いてSPATS2Lをノックダウンしたところ、その浸潤能、遊走能が低下した。SPATS2Lタンパク質の発現低下により、胚の正常な発育が阻害される可能性が示唆された。

絨毛におけるDNAメチル化プロファイルの違いを初めて発見

今回の研究では、原因不明習慣流産患者の脱落膜ではなく絨毛において、DNAメチル化プロファイルが正常妊娠群と異なっていることを世界で初めて発見したという。SPATS2LのDNAメチル化異常だけで流産の原因になるとは断定できないものの、複数の遺伝子のDNAメチル化異常が重なることで、結果として流産が起こりうることが示唆された。今回、網羅的にDNAメチル化を解析した5例の習慣流産患者は、全員その後の妊娠で最終的に生児を獲得できている。これにより、従来原因不明と説明していた習慣流産患者に、研究的にはエピゲノム異常で流産となる症例が存在し、その場合は後の生児獲得の期待値が高いことを説明できるようになる。このことは、精神的苦痛を数多く経験している習慣流産患者にとって、大きな精神的な支えになることが期待されるという。

今後の展開として、「近年、特定のSNPとDNAメチル化異常との関連が指摘されており、習慣流産患者の症例数を増やしてSNP多型解析を行い、SPATS2Lのメチル化率と多型との関連があるか検討する予定である」と、研究グループは述べている。

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