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スマートフォンに実装可能な「眼科画像解析」AIモデルを開発-東北大ほか

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2022年06月17日 AM10:41

特定の部分を精確に計測するAIモデルは容量が大きいという難点があった

東北大学は6月16日、眼科検査画像に対する新たな人工知能()のモデルを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科学分野の中澤徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」(電子版)に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

)はAIの仕組みの一つで、画面に映った人や物の検出や、その形状を抽出する目的で、近年急速にその技術が発展してきた。身近なところでは、ショッピングセンターの入口などで映った人の顔を検出し、体温を自動的に測定するカメラでも、この技術が応用されている。通常、物の形状の抽出では輪郭の正確さはそこまで問題とならないことが多いが、病気の診断で異常がみられる部分の大きさを測定する場合には、その精度が非常に重要となる。また、人生100年時代を迎える日本において医療資源の不足がますます深刻化していくことは明らかだ。今後、日常の健康管理、自己検診や遠隔診療に至るまで、小型機器でのAIのニーズは高まっていくことが予想される。

一方、眼科の検査では「眼底写真」と呼ばれる目の奥を映した写真と、「光干渉断層計」という眼の断面を調べる検査の画像が広く用いられている。しかし、これらの画像の中で特定の部分を精確に計測するAIのモデルを作成しようとすると、とても大きな容量となり、スマートフォンなどの小型機器への組み込みの際に障害となっていた。

従来のモデルよりも小型でありながら、同等以上の緑内障検出精度を確認

そこで研究グループは今回、スマートフォンなどの身近なITデバイスに搭載できるくらい軽量で、医療画像の診断にも簡単に適用できるようなAIモデルを新たに開発した。同モデルでは、従来の容量の大きいモデルと比較して、同等以上の疾患の検出能力を持ち、また、疾患の特徴をAIが学習するために必要なデータの数も少なくて済むのが特徴だという。

また、同AIモデルでは、モデルの容量を決めるパラメータの数が、現在広く用いられているUnetと比較して10分の1のサイズとなっている。一般的にモデルの容量を小さくすると性能が下がる傾向があるが、同モデルのDice係数(D)は0.958±0.0181と、Unet(D=0.958±0.0183)やDeepLabV3+(D=0.949±0.0216)と比較して、同等以上の精度が得られたとしている。

さらに、光干渉断層血管撮影における中心窩無血管域(FAZ)のセグメンテーションによる緑内障検出精度はAUC=0.813と、既存のソフトウェアによる検出精度AUC=0.776を比較して優れた結果が得られている。モデルの容量を軽減するのに寄与しているチャネルナローイングの手法は、形状の抽出だけでなく、疾患の診断予測でも良好な結果を得ることができた。これまでに、同モデルを利用して小型機器でも緑内障が鋭敏に検出できること、眼底写真に写る特定の部位や出血している場所の境界を高い精度で描出できることを確認したという。

眼の病気を身近な場所で自己検診し、早期発見・予防できるような社会実装への応用に期待

今後、本モデルを活用し、緑内障をはじめとした眼の病気を、眼科を受診する前の段階で、身近な場所での自己検診を通じた早期発見・早期予防ができるような社会実装への応用が期待される、と研究グループは述べている。

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