製薬会社のヤンセンファーマは多発性骨髄腫について、D-VRd療法が未治療の移植適応患者と非適応患者の両者に使用可能となったことを踏まえて2025年8月1日にセミナーを開いた。
D-VRd療法とは、ダラツムマブ(商品名:ダラキューロ)+ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)+レナリドミド(商品名:レブラミド)+デキサメタゾン(商品名:デカドロンなど)の4剤併用療法のこと。
【移植適応多発性骨髄腫患者】 “Functional Cure”実現に期待
セミナーに登壇した鈴木憲史氏(日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター顧問)は、造血幹細胞移植が可能な多発性骨髄腫患者を対象にD-VRd療法の有効性を検証した海外第3相PERSEUS試験の結果を改めて紹介した。
PERSEUS試験の概要
- 対象:造血幹細胞移植の適応となる未治療の多発性骨髄腫患者709例
- 試験群:D-VRd群355例
- 対照群:VRd群(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン群)354例
- 主要評価項目:無増悪生存期間(PFS)
- 主な副次評価項目:完全奏効(CR)以上の奏功率、微小残存病変(MRD)陰性率(10⁻⁵閾値)、全生存期間(OS)
鈴木氏は、主要評価項目であるPFS〔中央値は未到達でハザード比(HR)0.42、95%CI 0.30~0.59、P<0.0001〕や、主要な副次評価項目のうち、全体でCR以上の奏効が認められた患者の割合、MRD陰性率(10⁻⁵閾値)でVRd群に対するD-VRd群の優越性が認められたことを紹介。
「D-VRd療法は高リスク例も含め、移植適応多発性骨髄腫患者の新たな標準治療となる。より深い寛解の達成・維持に寄与し、病気はあっても日常生活に困ることなく社会に参加し続けられる“Functional Cure”の実現が期待される」と述べた。
【移植非適応多発性骨髄腫】D-VRd療法と既存の標準治療は使い分けが重要に
黒田純也氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学教授)は、移植非適応患者を対象としたD-VRd療法の有効性を検証した国際共同第3相CEPHEUS試験の結果を解説した。
CEPHEUS試験の概要
- 対象:移植非適応または移植を拒否した未治療の患者多発性骨髄腫患者395例
- 試験群:D-VRd群197例
- 対照群:VRd群198例
- 主要評価項目:MRD陰性率(10-5閾値)
- 主な副次評価項目:CR以上の奏効率、PFS、12か月以上の持続的なMRD陰性率
同試験で主要評価項目〔MRD陰性率はD-VRd群53.3%、VRd群35.4%、オッズ比(OR)2.07、95%CI 1.38~3.10、P=0.0004〕を達成したことを踏まえて黒田氏は、「これまで治療効果が十分でなかった移植非適応患者に対し、D-VRd療法はより高い治療効果が期待できる新たな選択肢となる」と述べた。
一方で、「すべての患者にD-VRd療法が適するわけではなく、既存の標準治療との使い分けが今後ますます重要になる」と指摘。個々の患者の状態に応じた治療選択の重要性を強調した。
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・ヤンセンファーマ株式会社 プレスリリース


