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ミトコンドリア腎症、世界初の大規模症例調査で全体像を明らかに-千葉東病院ほか

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2022年02月07日 AM11:30

希少なため既報のサンプルサイズは小さく、全体像が把握できていなかった

千葉東病院は2月4日、ミトコンドリア病によって起きるミトコンドリア腎症の国内83症例を解析し、臨床的な特徴、病理学的な特徴、また遺伝子診断結果や長期予後についてまとめ、研究結果を論文報告したと発表した。この研究は、同病院の今澤俊之統括診療部長(腎センター長、臨床研究部腎ミトコンドリア研究室室長)、千葉県こども病院代謝科の村山圭部長(遺伝診療センター長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ミトコンドリア病は、約5,000人に1人の頻度で発症する、エネルギー産生異常を来す先天代謝異常症。ミトコンドリア病によって引き起こされる腎症である「」の症例については、これまで症例報告、複数例を集めたケースシリーズでの報告、総説が報告され、その多様性が明らかにされてきた。一方で、ミトコンドリア腎症はまれな疾患であるため、これまでの研究で評価されたサンプルサイズは小さく、同疾患の全体像は把握できていなかった。ミトコンドリア腎症のより的確な診療や病態の理解のため、また、新たな診断法や治療法を開発するためには、大規模データを用いた臨床研究が必要だ。

国内757の腎臓内科に腎生検の有無に関わらず調査、81症例のデータを収集

研究グループは、日本腎臓学会が有する世界最大規模の腎生検データベース、日本腎生検レジストリー(J-RBR)システムに2007年7月から2018年1月までに登録された3万8,351例のデータを予備的に解析した。その結果、ミトコンドリア腎症を有する腎症16症例が抽出された。しかし、ミトコンドリア腎症の包括的な解析を行うには症例数が足りなかった。

そこで、全国のより多くの腎臓内科のある施設に対して、腎生検を行った症例だけでなく、行わなかった症例も含めて、より大規模な調査を行うこととした。具体的には、日本腎臓学会腎臓病レジストリー委員会の協力も得て、国内757の腎臓内科(腎疾患診療を専門とする施設)に対して2009年から2018年までのミトコンドリア腎症の診療に関する調査を実施。その結果、81症例という、これまで世界に類を見ない多数のミトコンドリア腎症症例のデータを得た。このデータを用いて、臨床的特徴、病理学的特徴、遺伝学的背景、長期予後に関する解析を行った。

mtDNA変異が多く、難聴の合併が多いが限局型や蛋白尿のない症例も

結果、81症例の原因遺伝子の内訳は、核遺伝子(nDNA)異常が12症例、(mtDNA)異常が69症例だった。中でも、mtDNA異常のmt.3243A>G点変異が大多数を占めていた。

最も多い合併症は難聴だったが、他の臓器に症状を全く有さない腎限局型は10%程度、蛋白尿を有さない症例は7%程度あった。腎病理像としては、巣状分節性糸球体硬化症像を呈することが最も多かったが、成人発症例では糖尿病性腎臓病、腎硬化症、間質性腎障害像などを呈する例もあった。

小児発症と成人発症で予後に有意差なし、発症から遺伝学的診断まで中央値6年

中央値11年のフォローアップ期間中に、全体の50.8%の症例において末期腎不全に至り腎代替療法(透析もしくは腎移植)が開始された。小児発症例と成人発症例の間には腎代替療法開始をendpointとした生存曲線に差はなかった。

中央値12年のフォローアップ期間中に、全体の25.4%の症例が死亡した。小児発症例と成人発症例の間には生存曲線に統計学的な差はなかった。

また、腎症発症から遺伝学的診断まで中央値で6年かかっており、診断までの時間短縮が課題として見えてきた。

ミトコンドリア腎症の病態解明や新規治療開発に期待

遺伝学的解析技術の向上により、ミトコンドリア腎症の原因遺伝子として新たに報告される例も増えてきた。一方で、まだ同疾患についての認識は広まっておらず未診断のままで経過している症例も多いことが予想される。

そのような中で、千葉県の研究グループが中心となって行った今回の報告は、これまで全くわかっていなかったミトコンドリア腎症の全体像、すなわち、ミトコンドリア腎症症例の臨床・病理学的特徴やその予後についてまでを世界で初めて大規模に調査し示したものとなった。研究グループは、「今後、ミトコンドリア腎症の病態解明や病因遺伝子に基づく治療開発など、ミトコンドリア病研究の一層の発展につながることを期待する」と、述べている。

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