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新型コロナ「インド株」、日本人に多い免疫応答から逃避すると判明-東大医科研ほか

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2021年06月17日 AM11:45

「懸念すべき変異株」は中和抗体だけでなく細胞性免疫からも逃避している?

東京大学医科学研究所は6月16日、新型コロナウイルスの「懸念すべき変異株」である「カリフォルニア株(B.1.427/429系統)」と「インド株(B.1.617系統;デルタ型)」に共通するスパイクタンパク質の「L452R変異」が、HLA-A24を介した細胞性免疫からの逃避に関わることを明らかにし、また、「L452R変異」は、ウイルスの感染力を増強する効果もあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所附属感染症国際研究センターシステムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」によるもの。研究成果は、「Cell Host & Microbe」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

)は、2021年6月現在、全世界において1億5千万人以上が感染し、350万人以上を死に至らしめている、現在進行形の災厄。世界中でワクチン接種が進んでいるが、2019年末に突如出現したこのウイルスについては不明な点が多く、感染病態の原理やウイルスの複製原理、免疫逃避と流行動態の関連についてはほとんど明らかになっていない。

ヒトの免疫、特に獲得免疫は、「液性免疫(中和抗体)」と「」に大別される。イギリス株やブラジル株などの新型コロナウイルスの「懸念すべき変異株」が、液性免疫(中和抗体)から逃避する可能性については世界中で研究が進んでいるが、細胞性免疫からの逃避の可能性については報告がなかった。

日本人に多い細胞性免疫型HLA-A24によって認識される部位に変異

今回の研究では、まず、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部が、「」という、日本人に多く見られる型の細胞性免疫によってきわめて強く認識されることが、免疫学実験によって実証された。

次に、75万配列以上の新型コロナウイルス流行株の大規模な配列解析を実施。結果、スパイクタンパク質のHLA-A24で認識される部位に、いくつかの重要な変異があることが判明した。昨年デンマークで流行したB.1.1.298系統で見つかったアミノ酸変異「Y453F」、および、現在世界中で流行拡大しているB.1.617系統(通称:インド株)とB.1.427/429系統(通称:カリフォルニア株)のアミノ酸変異「L452R」だ。

さらに免疫学実験により、これらの変異はいずれも、HLA-A24による細胞性免疫から逃避することが実証された。これは、「懸念すべき変異株」が、細胞性免疫から逃避することを実証した世界で初めての成果だという。

インド株とカリフォルニア株のL452R変異は感染力も増強

今回の研究で見出されたY453F変異とL452R変異はどちらも、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の中でも、新型コロナウイルスの感染受容体に結合するモチーフの中の変異だった。そこで次に、これらの変異が、ウイルスの感染と複製効率に与える影響を、ウイルス学実験で検討。その結果、L452R変異は、ウイルスの膜融合活性を高め、感染力を増強させることが明らかとなった。

L452R変異は、現在世界中で流行拡大しているインド株に特徴的な変異。また、L452R変異による免疫逃避に関わる、細胞性免疫を担うHLA-A24というタイプの白血球抗原は、約60%の日本人が持っている。L452R変異は、日本人に多いHLA-A24による細胞免疫から逃避するだけでなく、ウイルスの感染力を増強しうる変異であることから、この変異を持つインド株は、日本人あるいは日本社会にとって、他の変異株よりも危険な変異株である可能性が示唆される。

今回の研究を実施した研究コンソーシアム「G2P-Japan」では、今後も、新型コロナウイルスの変異(genotype)の早期捕捉と、その変異がヒトの免疫やウイルスの病原性・複製に与える影響(phenotype)を明らかにするための研究を推進するとしている。

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