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電気式の「貼る注射」を開発、高速での皮下注入/組織液採取を可能に-東北大

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2021年02月01日 AM11:45

既存マイクロニードルは、投与薬剤量が少ない、時間がかかるなどの課題

東北大学は1月27日、多孔性の「ポーラスマイクロニードル」(PMN)を開発し、電気で「流れ」が発生する性質を付与することによって、電気式の貼る注射「マイクロニードルポンプ」による多量・高速の注入、および皮下組織液の高速採取を可能にしたと発表した。これは、同大大学院工学研究科および高等研究機構新領域創成部の西澤松彦教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。

超高齢化、大規模自然災害、さらにコロナ禍を通して、高効率なリモート社会システムへの移行が急がれる中、リモート医療の要であるセルフケアのためのインフラ整備が進み、在宅オンライン診断やウェアラブルデバイスによる常時健康管理、そして安全で適切なセルフメディケーションなどの充実が望まれている。セルフケアデバイスを象徴する先進ツールとして注目される「」は、痛みを感じない数100ミクロンの短い針(、MN)が多数並んだ「貼る注射」であり、すでに美容分野ではヒアルロン酸パッチが急速に普及している。そして、薬剤やサプリメントの高効率な経皮浸透、さらにワクチンの投与方法としても注目され期待が集まっている。

注射針のような中空のマイクロニードルを再現性良く作製するのはいまだ困難だ。そのため、マイクロニードルによる薬剤投与には2種類の方法が考えられてきた。1つはニードルの表面に塗った薬剤やワクチンが皮膚への刺入後に溶け出すタイプ、もう1つは、薬剤を含むマイクロニードル全体が溶けるタイプだ。マイクロニードルに塗布・内包できる薬剤は少量に限られ、脆弱な薬剤については塗布・内包の操作、および保存が困難な場合がある。また、両タイプ共に、薬剤の溶出には一定の時間が必要だ。そのため、多量の薬剤やワクチンを高速で注入できるマイクロニードル技術の創出が、医薬分野での用途拡大と普及促進に有効だと期待されてきた。


画像はリリースより

電気浸透流の発生機能により、皮下注入/抽出を実現

研究グループは、多孔性のPMNを通して「流す」メカニズムの開発を行った。注射器のように圧力で押し出す(吸い込む)方法は、完全に密封された接続を必要とし、マイクロニードルに組み合わせるのが困難だ。そこで、電気で発生・制御が可能な「電気浸透流(Electro Osmotic Flow, EOF)」に着目した。EOFは、固定電荷を有するイオン導体が、対イオンの移動方向へ溶媒(水)の移動を引き起こす現象。例えば、ハイドロゲルの高分子鎖に電荷が固定されていると、プラスイオンの移動がEOFを生み出す。このようなハイドロゲルを充填してPMNに電荷を固定すると、経皮投薬や組織液の採取をEOFで加速できると考えた。

さらに、酵素によるバイオ発電パッチと組み合わせることで、電源装置から解放された「オール有機物の使い捨て型ニードルポンプパッチ」が実現し、電源事情に恵まれない途上国や被災地などへの医療普及にも寄与すると考えられた。そこで、PMNとフルクトース/O2電池によるバイオ発電パッチによって、外部からの電力供給を必要としない自立型デバイスとして駆動させる可能性を検討した。3セルを直列つなぎして高電圧化、フルクトース溶液はバイオ電池とPMNの間のコットンに含ませ、O2は大気中から取り込まれる仕組みにした。その結果、PMN無しでは進まないデキストリンの皮下注入が確認され、グルコースの抽出についてもEOFによる明らかな促進が確認された。

「オール有機物の使い捨て型ポンプパッチ」を実現し、経皮自己服薬の応用へ

今回の研究で多孔性のPMNを創出し、電気浸透流の発生が実証できたことによって、既存マイクロニードルの課題(多量薬剤の高速投与)を解決する新タイプの経皮投薬システムが提案できた。研究グループは今後、EOF発生機能を有するPMNポンプを、先に発表しているバイオ発電パッチに搭載し、「オール有機物の使い捨て型ポンプパッチ」のプラットフォームとして、美容・健康・医療分野における経皮セルフメディケーションおよび簡易ワクチン注入への応用を具体化していく予定だとしている。

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