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RNAを標的とする核酸医薬の効果を飛躍的に向上する新技術を開発-東京医歯大ほか

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2020年12月09日 PM12:00

DNA/DNA 2本鎖核酸が、細胞内でのみ治療効果を発揮するとの仮説を立て検証

東京医科歯科大学は12月8日、RNAを標的とした従来のアンチセンス核酸医薬の効果を飛躍的に向上する新技術の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野(脳神経内科)の横田隆徳教授、永田哲也プロジェクト准教授、吉岡耕太郎特任助教、浅見裕太郎大学院生らの研究グループと、アイオニス・ファーマシューティカルズ社(IONIS Pharmaceuticals)との共同研究によるもの。研究成果は、「Molecular Therapy」に掲載されている。


画像はリリースより

アンチセンス核酸は、細胞内のRNAを治療標的とし、従来の低分子量化合物や抗体等の医薬品では制御が難しい細胞内の遺伝子を標的にして治療するための有望な技術だ。近年複数のアンチセンス核酸が臨床応用されており、臨床試験も数多く行われている。研究グループはこれまでに、従来のRNAを標的とした1本鎖アンチセンス核酸の効果を大幅に向上できる「DNA/ 」を開発。さらに、この技術を実用化に向けて開発するため、東京医科歯科大学発のバイオベンチャーとして「レナセラピューティクス株式会社(レナ社)」が設立された。その後、レナ社から日米の大手製薬企業に、次々とヘテロ2本鎖核酸技術がライセンスアウトされている。

一方で、DNA/RNAヘテロ2本鎖核酸が効果を発揮するには、標的細胞内でDNA/RNAの2本鎖を切断する酵素であるRNaseHにより、RNA相補鎖が切断されることが必要となる。このため、これまでは2本鎖核酸のデザインが限られていた。そこで、これを改善してより臨床応用に近づけるためにDNA/DNA 2本鎖核酸を新規に考案した。DNA分解酵素の細胞内外における発現の違いから、DNA相補鎖を用いたDNA/DNA 2本鎖核酸が細胞内でのみ治療効果を発揮するとの仮説を立て、検証を行った。

マウスの肝臓でアンチセンス核酸の標的遺伝子抑制効果が飛躍的に向上、肝臓・腎臓への障害も認めず

アンチセンス核酸にDNAを基本構造とする相補鎖を結合したDNA/DNA 2本鎖核酸を合成し、相補鎖にビタミンE誘導体を結合してマウスの静脈内に投与すると、1本鎖アンチセンス核酸に比べて肝臓の標的RNAを顕著に抑制し、血中のLDLコレステロールも有意に低下させることがわかった。遺伝子抑制効果の向上は、複数の標的RNAに対して証明され、元となるアンチセンス核酸の長さや化学修飾を変えても保たれたことから、さまざまな標的遺伝子に対して応用が可能であると考えられた。

また、DNA相補鎖はRNA相補鎖に比べて肝臓内でより速く分解されており、DNA/DNA 2本鎖核酸は細胞内でDNA/RNAヘテロ2本鎖核酸とは異なるタンパク質に認識されたり代謝を受けたりしていると考えられ、生物学的にも異なった意義を持っていることが示唆された。近年核酸医薬で臓器障害やサイトカイン上昇などの副作用が問題となっているが、DNA/DNA 2本鎖核酸はマウス投与後の肝臓や腎臓への障害はなく、サイトカイン上昇も認められなかったという。

B型肝炎、NASH、アルツハイマー病など、治療が困難だった疾患に臨床応用できる可能性

核酸医薬は近年副作用が問題になっており、DNA/DNA 2本鎖核酸はその副作用を回避できる方法の一つとして期待されている。また、DNA/DNA 2本鎖核酸がアンチセンス核酸の効果を飛躍的に高めることから、従来の核酸医薬の構造の概念が拡張され、これは今後の治療薬としての臨床応用に向けて重要な知見となる。さらに、DNAはRNAよりも化学的に安定で扱いやすく製造コストが安いため、2本鎖核酸の製剤化にあたって優位性があると考えられる。

「DNA/DNA 2本鎖核酸はあらゆるアンチセンス核酸医薬に応用が可能な基盤技術であるため、将来的にB型肝炎、NASH、アルツハイマー病などの今まで治療が困難だった疾患への臨床応用が見込まれる」と、研究グループは述べている。

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