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働くうつ病患者対象の全国調査、「診断結果の報告」は雇用形態で差-武田薬品ほか

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2020年11月25日 PM12:00

うつ病患者464人対象、雇用形態別に分析

武田薬品工業株式会社とルンドベック・ジャパン株式会社は11月18日、過去5年以内の就労期間中に精神科、心療内科、メンタルクリニックで初めてうつ病と診断された19歳から64歳の全国の患者464人を対象とするインターネット調査を実施し、その結果を発表した。


画像はリリースより

この調査は、世界精神保健連盟(World Federation for Mental Health)が定める世界メンタルヘルスデー(WMHD、10月10日)に合わせ、雇用形態別のうつ病患者の就労における現状と課題およびコロナ禍での影響を把握することを目的に、武田薬品工業株式会社とルンドベック・ジャパン株式会社が共同で行ったもの。対象の内訳は、正社員200人、契約社員または嘱託社員116人、派遣社員46人、アルバイト・パートタイム102人であった。

どの雇用形態でも受診に抵抗感、その背景に「仕事継続への不安」

調査対象のうつ病患者はいずれの雇用形態においても、仕事の継続やキャリアへの影響についての不安を主な理由として、全体の半数以上が精神科・心療内科・メンタルクリニックの受診に抵抗を感じていたことがわかった。具体的には、受診に抵抗を感じた理由として、「このまま仕事を続けられないかもしれない」(59%)、「うつ病と診断されることで仕事から外されるかもしれない」(36%)、「将来のキャリアに不利になるかもしれない」(29%)が挙げられた。

うつ病患者が診断時に仕事をするうえで支障になった症状としては、「集中力が保てない(保てなかった)」(44%)が最多。うつ病を発症する前と同じようなパフォーマンスを発揮できないことが、仕事への継続・将来へのキャリアへの不安にもつながっていると考えられたという。

上司への診断結果の報告、正社員は84%報告したのに対し、非正規雇用患者は約半数止まり

一方、上司にうつ病と診断された結果を伝えているかについて、正社員の84%は、会社の制度の利用や仕事への配慮を求めて上司に診断結果を伝えている一方、派遣社員、パートタイム・アルバイトといった非正規雇用の人ではその割合が低く(52%、57%)、会社の人事制度などを利用することが難しく、退職することによってさらに就労の継続が難しくなっている可能性があることもわかった。

うつ病と診断されたことを上司に伝えてよかったと思う理由として、「仕事面(業務内容や異動など)で配慮してもらえたため」(45%)、「会社の制度が利用できたため」(37%)に続き「気持ちが楽になったため」(37%)が挙げられた。さらに、うつ病と診断されたことを同僚に伝えてよかったと思う上位の理由でも「気持ちが楽になったため」(48%)、「周囲に病気であることを知ってもらえたため」(42%)と、職場で上司や同僚と病状について話すことで、仕事面への配慮だけではなく患者の安心感につながっている傾向がみられた。

全体の58%がコロナ禍で心身のストレス増加

また、新型コロナウイルス感染症による影響について、就労しているうつ病患者は、「経済的な不安のため」(59%)、「感染に対する不安のため」(50%)、「外出を自粛しなくてはならなかったため」(48%)を主な理由として、58%の人が心身のストレスの増加を感じていることがわかった。一方、7%の人はストレスが減ったと答えており、その理由として「外出する必要がなくなったため」(66%)、「人と会う機会が減ったため」(66%)、「一人でいられる時間が増えたため」(56%)、「通勤がない、または通勤することが少なくなったため」(53%)、「対面のコミュニケーションが減ったため」(50%)と続いた。

同調査により、働くうつ病患者のニーズは、うつ病の治療後も就労を継続していくことであり、雇用形態にかかわらず、仕事を継続するための企業内のサポート、包括的な社会の構築が重要であることが示唆された。

長年にわたりうつ病の研究と治療に携わり、調査の監修者である、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授、日本うつ病学会理事長三村將先生は今回の調査結果について次のように述べている。

「今回の調査で明らかとなった就業しているうつ病患者の持つ不安や課題は、臨床現場で患者から把握している内容と同様の傾向で、うつ病という疾患へのサポートを検討していくうえで意義あるものだと考える。特に、うつ病と診断されることによる就労の継続への不安や就労に支障がでる症状があるという実態は、広く理解されているとは言い難い状況だ。国内の労働人口が減少傾向にある中、就労意欲のあるうつ病患者が成果を出しながら継続して働き続けられるよう、制度の構築だけではなく、患者を取り巻く上司や周囲の同僚の方々が疾患への正しい理解に基づいてサポートすることが重要である」。

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