医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > アスリートの「筋肉の硬さ」と「競技パフォーマンス」に関連性があると判明-順大

アスリートの「筋肉の硬さ」と「競技パフォーマンス」に関連性があると判明-順大

読了時間:約 2分13秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年08月20日 AM11:45

筋肉が「軟らかい」方が良いか「硬い」方が良いかを調査

順天堂大学は7月30日、アスリートの「筋肉の硬さ」と「競技パフォーマンス」の関連性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院スポーツ健康科学研究科の宮本直和准教授らの研究グループによるもの。研究成果はアメリカスポーツ医学会雑誌「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版で公開されている。


画像はリリースより

スポーツの現場では、従来よりアスリートの筋肉に関して、「軟らかくて良い筋肉」などと表現することがある。「筋肉の硬さ・軟らかさ」というと、一般的には「触った時に感じる硬さ(=へこみにくさ)」が想起されるが、スポーツの場面で必要とされる筋肉の「硬さ・軟らかさ」は、触った時に感じる硬さではなく、「伸び縮みしやすさ」としての「軟らかさ」を指す。しかし、実際にアスリートが高いパフォーマンスを発揮するうえで、バネとなる筋肉が、軟らかく伸び縮みしやすい方が良いのか、硬く伸び縮みしにくい方が良いのかについては、これまでわかっていなかった。

そこで研究グループは、筋肉のバネを用いる動きとして走運動に着目し、陸上短距離走選手や長距離走選手の筋肉の硬さ(伸び縮みしにくさ)・軟らかさ(伸び縮みしやすさ)と、競技パフォーマンスとの関係について調査した。

競技種目特性と筋肉の質に応じたトレーニングの必要性

今回の研究では、走運動の接地時に伸び縮みし、また、短距離選手と長距離選手で速筋線維(白筋)と遅筋線維(赤筋)の割合(筋線維組成)が大きく異なることがわかっている外側広筋に着目し、計測を実施。筋肉の硬さ(伸び縮みしにくさ)の測定には、生体軟組織の硬さを非侵襲的かつ局所的に計測することができる超音波画像診断装置の剪断波エラストグラフィ法を用いた。この手法を用い、現役の陸上競技短距離走選手22名および長距離走選手22名の外側広筋の硬さを調査。その結果、長距離走選手の筋肉は短距離走選手の筋肉よりも硬いことがわかった。

そこで、短距離走選手において、筋肉の硬さと100m走のタイムとの関連を検証したところ、硬く伸び縮みしにくい筋肉を持つ選手の方がパフォーマンスが高い(タイムが良い)ことが判明。一方、長距離走選手においては、軟らかく伸び縮みしやすい筋肉を持つ選手の方がパフォーマンスが高いことがわかった。これにより、アスリートが高いパフォーマンスを発揮する上で、筋肉が軟らかく伸び縮みしやすい方が適しているのか、硬く伸び縮みしにくい方が適しているのかは、競技種目特性によって異なることが明らかになった。

今回の研究成果は、アスリートが高いパフォーマンスを発揮する上で筋肉の質と競技種目との組み合わせが重要であり、その組み合わせは競技種目特性によって異なることを初めて明らかにしたもので、この結果は、アスリートが競技特性と筋肉の質に応じたトレーニングを行う必要があることを示唆している。また、同研究グループの近年の研究により、筋肉の硬さは、「アスリート遺伝子」と呼ばれるαアクチニン3遺伝子や肉離れなどの筋損傷受傷リスクと関連があるエストロゲン受容体遺伝子のタイプの影響を受けることがわかってきている。

研究グループは、「今後、どのようなトレーニングを行うと筋肉が硬く伸び縮みしにくくなるのか(または軟らかく伸び縮みしやすくなるのか)などについて詳細に検討することにより、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、競技特性と個人の特性を考慮したカスタムメイド型トレーニング法の構築を目指している」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 平均身長の男女差、軟骨の成長遺伝子発現量の違いが関連-成育医療センターほか
  • 授乳婦のリバーロキサバン内服は、安全性が高いと判明-京大
  • 薬疹の発生、HLAを介したケラチノサイトでの小胞体ストレスが原因と判明-千葉大
  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか