医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 動脈硬化病変部を体外から生きたまま観察できるマウスを開発-筑波大

動脈硬化病変部を体外から生きたまま観察できるマウスを開発-筑波大

読了時間:約 1分21秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年10月03日 AM11:50

生体を透過する近赤外光の波長を持つ蛍光タンパク質「

筑波大学は9月28日、生体を透過する近赤外光の波長を持つ蛍光タンパク質「iRFP」を動脈硬化病変部に発現させて、病変部が光るマウスを開発したと発表した。この研究は、同大医学医療系の濱田理人助教、Kaushalya Kulathunga(ヒューマンバイオロジープログラム博士課程)、三輪佳宏講師、高橋智教授、独Bonn大学のBernd K. Fleischmann教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」で公開された。


画像はリリースより

動脈硬化については、モデル動物を使用した解析によってさまざまなことが明らかになっている。しかし、これまで、実験動物を使った動脈硬化病変部の評価には動物の安楽死が必要であり、病態を経時的に評価することはできなかった。また、血管を摘出するための時間的・技術的な問題があった。

動脈硬化誘導食の量に依存してiRFPの蛍光量が変化

今回の研究に先立ち、研究グループは2014年に、iRFPを全身の全ての細胞に発現するiRFPマウスの作製に成功。このiRFPマウス骨髄細胞を用いた移植実験により、血液細胞のみでiRFPを発現する動脈硬化モデルマウスを作製した。このマウスに動脈硬化誘導食を8週間与え続け、iRFPの蛍光を生体イメージングシステム(IVIS)により観察。その結果、マウスの胸部から腹部にかけてiRFPの蛍光が観察されたという。

また、マウスの大動脈を取り出し、脂肪染色を行い、動脈硬化病変部を観察した結果、iRFPの蛍光と脂肪染色で染まる場所が一致していることが判明。さらに、動脈硬化誘導食の量を調整することにより、経時的かつ動脈硬化誘導食の量に依存してiRFPの蛍光の量が変化することがわかったという。これは動脈硬化の病態の変化を、マウスを殺さずにiRFPの蛍光のみで判断できることを意味する。

研究グループは、「このマウスを用いれば、マウスを安楽死させることなく、動脈硬化に対する薬剤の効果を調べる治療法開発や、動脈硬化自体の発症機序を調べる基礎研究などに役立つものと期待される」と述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか