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口臭の原因となる硫化水素を産生する酵素の立体構造と反応機構を解明-岩手医科大

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2018年03月06日 PM01:00

硫化水素は口臭や歯周病悪化の要因のひとつ

岩手医科大学は3月1日、健常者を含め多くの成⼈で検出される⻭周病菌「Fusobacterium nucleatum()」に特有の硫化水素産生酵素「Fn1055」に着目し、この酵素の立体構造と反応機構を明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部の毛塚雄一郎助教、野中孝昌教授、琉球大学理学部の石田哲夫教授および愛知学院大学⻭学部の吉田康夫准教授からなる研究グループにより行われたもの。研究成果は、英科学誌「Biochemical Journal」に掲載されている。

歯周病菌により産生される硫化水素は、口臭の原因となるだけでなく歯周病を悪化させる要因のひとつ。口腔内の硫化水素濃度と歯周病の進行度の間には高い相関があり、臨床現場では、患者の口腔内の硫化水素濃度を測定し、口臭や歯周病の程度を判定する指標としている。口腔内で検出される硫化水素は、歯周病菌が作る「硫化水素産生酵素」により、主にシステインというアミノ酸から作られる。これら酵素の反応機構の解明は、口臭や歯周病に関与する硫化水素産生の根本的な理解につながるという。

システインから硫化水素とセリンを生成する機構を解明

今回、研究グループは、硫化水素産生酵素Fn1055がシステインから硫化水素とセリンを生成する反応機構を解明。この酵素は、最大で1秒間に約4回の速さで反応を行うが研究グループは、酵素反応をミリ秒(1000分の1秒)オーダーで追跡し、この酵素が硫化水素を含む生成物を産生する詳細な機構を明らかにしたという。


画像はリリースより

また、決定した反応前の酵素の立体構造を参考に、酵素の反応が途中で停止するような仕掛けを施すことで反応の中間状態(α-アミノアクリル酸中間体複合体)の構造解析にも成功。反応には、酵素の構造変化を伴うことが強く示唆されたという。

今回の研究成果について、研究グループは、「硫化水素産生酵素特異的な阻害剤の開発に寄与すると考えられ、新たな洗口液成分の開発にもつながることが期待される」と述べている。

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