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CCR7ケモカイン分子種のCCL21、T細胞の自己寛容性確立に重要-徳島大

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2017年06月16日 PM02:15

自己寛容性確立に重要なCCR7ケモカイン分子種

徳島大学は6月14日、自己免疫疾患発症を制御する分子機能を解明したと発表した。この研究は、同大先端酵素学研究所免疫系発生学分野の大東いずみ准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Experimental Medicine」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

自己免疫疾患は、体にとっての異物を排除する役割を持つ免疫システムが正常な細胞や組織に反応して攻撃を加えてしまうことで発症する。その多くは、免疫細胞のひとつであるTリンパ球の異常であると考えられている。Tリンパ球は胸腺で産生され、その過程で自己と非自己の識別能を獲得。Tリンパ球は胸腺深部の髄質に移動すると、自己に応答して攻撃する自己反応性Tリンパ球が除去される。さらに、免疫応答を抑制する制御性T細胞が生成され、自己を攻撃しない仕組みである「免疫細胞の自己寛容性」が確立される。このT細胞の自己寛容性が破綻すると、自己免疫疾患を発症する。

Tリンパ球が胸腺内を移動するためには、ケモカインの連携が必要だ。中でも、髄質に局在する髄質上皮細胞によって産生されるCCR7ケモカイン分子種は、Tリンパ球を髄質へと誘導するのに必要であり、Tリンパ球の自己寛容性確立に重要であることは明らかにされてきた。しかし、CCR7ケモカイン分子種にはCCL19やCCL21などの分子種があり、それぞれ機能が重複しているのか、それとも固有に機能的重要性を担っているのかを含め、どのCCR7ケモカイン分子種が必要なのかは解明されていなかった。

CCL21欠損マウス、シェーグレン症候群に類似した症状示す

今回、研究グループは、CCL21を特異的に欠損するマウスの作製に成功。このマウスでは、胸腺でのTリンパ球の髄質への移動と自己反応性Tリンパ球の除去が障害されていた。また、唾液腺や涙腺で炎症を発症し、涙量の低下など自己免疫疾患のひとつであるシェーグレン症候群に類似した症状を示したという。

この研究により、複数存在するCCR7ケモカイン分子種の機能は重複していないこと、また、そのうちのCCL21がT細胞の自己寛容性確立に重要な分子であることが明らかになった。今後は、自己免疫疾患の発症を制御する分子機能が解明され、自己免疫疾患の治療法開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。

 

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