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抗IL−31抗体によるかゆみを標的としたアトピー性皮膚炎治療の可能性-京大

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2017年03月07日 PM12:30

かゆみの抑制により睡眠時間も増加

京都大学は3月3日、アトピー性皮膚炎に対する治療薬として開発中の抗IL-31受容体ヒト化モノクローナル抗体nemolizumabに関し、安全性や有効性、最適な投与量などを調べる第2相国際共同治験を行い、抗IL-31抗体の臨床症状やかゆみに対する有効性が確認されたことを発表した。この研究は、同大医学研究科の椛島健治教授らの研究グループが、、ドイツ、米国、英国、ポーランドの研究機関と共同で行ったもの。研究成果は「The New England Journal of Medicine」オンライン版に3月3日付けで掲載されている。


画像はリリースより

アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア障害、かゆみ、湿疹を主徴とする皮膚疾患で、慢性的に回復と悪化を繰り返す。皮膚に発生したかゆみは、掻きむしることで皮膚が刺激され、さらにかゆみが増すという、掻けば掻くほどかゆくなる悪循環が起こることが知られており、患者とその家族のQOLに悪影響を与える。アトピー性皮膚炎によるかゆみの発生にはインターロイキン-31()が関与していることが報告されており、IL-31を標的としたアトピー性皮膚炎のかゆみの治療戦略が期待されていた。

nemolizumabは、中外製薬株式会社が創製した、IL-31と結合する受容体IL-31RAのみを標的とするヒト化モノクローナル抗体で、IL-31とIL-31RAとの結合を阻害することにより薬効を発揮する。nemolizumabの臨床試験成績については臨床第1相試験の結果が、2015年にBritish Journal of Dermatologyに報告されている。今回結果が報告された試験は、これに引き続いて実施された日米欧5か国の第2相国際共同試験。同試験では、軟膏などの外用剤で十分な治療効果が得られない国内外の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者264名を、nemolizumabを4週間ごとに0.1、0.5、2.0mg/kg投与する群と、8週ごとに2.0mg/kg投与する群、またはプラセボ群(4週間ごと)に約50人ずつランダムに割り付け、12週にわたり皮下投与した。

抗IL-31による新たな治療手段、QOL向上へとつながる可能性

その結果、主要評価項目である12週時のそう痒VAS(visual analogue scale)変化率では、nemolizumab投与群でそれぞれ、-43.7%、-59.8%、-63.1%の改善を確認(0.1、0.5、および2.0mg/kg、4週ごと投与)。プラセボ群の-20.9%に対し有意な改善効果を認めた。また、アトピーの重症度を示すEASI(Eczema Area and Severity Index)でも、プラセボ群に対してnemolizumab投与群では有意に改善。 加えて、同論文では補足として、活動量計による評価で睡眠時間の増加も報告。抗IL-31受容体中和抗体の投与1週間後には、着床してから入眠するまでの時間がプラセボに比べて15分程度早くなり、安眠している時間も約20分増加。投与3週後には安眠している時間がプラセボに比べ40~50分長くなることも確認されたという。

アトピー性皮膚炎の患者は、かゆみのために寝付くまで時間がかかり、夜中にかゆくて目が覚めてしまうことが知られているが、これらの結果は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎において、nemolizumabがかゆみ抑制効果を表すこと、さらに睡眠の質を向上させ、QOLの向上に寄与することを示すもの。今後、IL-31の制御がアトピー性皮膚炎の新たな治療手段やQOL向上の一助となる可能性が期待されると同研究グループは述べている。

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