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受動喫煙による肺がんリスク評価 JTの見解に国がんが反論

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2016年09月29日 PM02:00

「迷惑や気配り、思いやりの問題ではない」とJTの見解を厳しく批判

国立がん研究センターが8月に受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」に変更したことを受け、日本たばこ産業株式会社は8月31日に社長名で「受動喫煙の疾病リスクについては」「科学的に説得力のある形で結論付けられていないものと認識」として、「本研究結果だけをもって、受動喫煙と肺がんの関係が確実になったと結論づけることは、困難」とする、「受動喫煙と肺がんに関わる国立がん研究センター発表に対するJTコメント」(以下、JTコメント)を発表した。

これに対し、国がんは9月28日に「受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解」を公表。

JTの「受動喫煙については、周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあることから、JTは、周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、たばこを吸われる方々にお願いしています」 (JTコメントより)という主張に対し、「受動喫煙は『迷惑』や『気配り、思いやり』の問題ではなく、『健康被害』『他者危害』の問題である。健康被害・他者危害があるという科学的事実に基づいて、公共の場および職場での喫煙を法律で規制するなど、たばこ規制枠組み条約で推奨されている受動喫煙防止策を実施することが必要」と厳しい言葉で反論した。

「大規模な疫学研究を重視すべき」国がん「メタアナリシスは信頼性高い」

両者の見解は個別の分析はもちろん、研究方法でも異なった意見を主張している。

「複数の独立した疫学研究を統合して解析する手法は、選択する論文によって結果が異なるという問題が指摘されており、むしろ、ひとつの大規模な疫学研究を重視すべきとの意見もあります」(JTコメントより)とのJTの主張に国がんは、「メタアナリシスは、医学研究の中で最も信頼度が高いもののひとつとして位置づけられている」「喫煙や生活習慣など病気の予防法、病気の治療法、がん検診の有効性などは、研究者個人の意見や個別の研究ではなく、ガイドラインに基づいて決定される。いずれのガイドラインの作成においても、複数の研究を統合したメタアナリシスの結果が最も重視されている」と真っ向から反論。「JTコメントは、国立がん研究センターが行った科学的アプローチに対し十分な理解がなされておらず、その結果として、受動喫煙の害を軽く考える結論に至っていると考えられます。これは、当センターとは全く異なる見解です」としている。

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