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脳内マリファナ「2-AG」、てんかんのけいれん発作抑制-東大ら

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2016年07月26日 PM02:00

複数のメカニズム介して神経細胞への興奮性入力を低下

東京大学は7月22日、脳内マリファナの一種である2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)が、てんかんを抑制するメカニズムを明らかにする研究結果を発表した。2-AGが複数のメカニズムを介して神経細胞への興奮性入力を低下させ、てんかんの症状であるけいれん発作や、てんかんの発症を抑制するとしている。


画像はリリースより

この研究は、同大大学院医学系研究科の狩野方伸教授らの研究グループが、、生理学研究所と共同で行ったもの。研究成果は、「Cell Reports」誌オンライン版に7月21日付けで掲載されている。

マリファナに含まれる精神作用物質(カンナビノイド)は脳内のカンナビノイド受容体と呼ばれる蛋白質に作用する。しかし、もともと脳の中にはカンナビノイド受容体に作用する物質が存在し、シナプス伝達を調節するなどの生理機能を営んでいる。このような脳内のマリファナ類似物質を“”と呼んでいる。

新しい抗てんかん薬開発に期待

今回、研究グループは、2-AGがてんかんの症状であるけいれん発作を強力に抑制していることを明らかにした。遺伝子操作によって2-AGを作ることができないようにしたマウスでけいれん発作を誘発すると、野生型のマウスに比べて重篤なけいれん発作が観察された。さらに、2-AGが合成できないマウスではてんかんを発症するまでの時間が短くなっていた。これらの結果は2-AGがけいれん発作だけでなく、てんかんの発症を抑える効果をもつことを示唆しているという。

てんかんは人口の0.5~0.8%が持つ慢性疾患であり、その中でも海馬とその周囲から発作が出現する内側側頭葉てんかんは薬物療法に対して治療抵抗性を示すことが多い。今回の研究で見出された2-AGのてんかん抑制作用は、あくまでマウスにおける現状ではあるが、今後モデル動物やヒトでの研究がより進むことにより、新しい抗てんかん薬の開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。

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