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酸化ストレス応答の制御因子「keap1」による新たながん細胞運動性制御メカニズムを解明-理研

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2015年12月04日 PM12:15

がん細胞の運動を制御する新しいメカニズムの解明へ

理化学研究所は12月2日、吉田化学遺伝学研究室の吉田稔主任研究員、伊藤昭博専任研究員らの共同研究グループが、酸化ストレス応答転写因子「」の負の制御因子である「」の新しい機能を発見し、がん細胞の運動を制御する新しい仕組みを発見したと発表した。


画像はリリースより

がん細胞の浸潤、転移に関わる重要な因子であるアクチン結合タンパク質のコータクチンは、多くの浸潤がんに高発現していることから、がん転移治療の標的分子として注目されている。コータクチンの活性は、アセチル化などの翻訳後修飾により制御されていることが知られていたが、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。

今回、研究グループは、コータクチンのアセチル化修飾酵素を調べている過程で、コータクチンが核と細胞質を行き来するシャトルタンパク質であることを見いだした。さらに、酸化ストレス応答転写因子Nrf2の負の制御因子であるKeap1をコータクチンの新しい結合パートナーとして発見したという。

コータクチン脱アセチル化酵素を標的とした創薬開発に期待

Keap1はコータクチンを細胞質にとどめ、さらに外部シグナルに応答して細胞辺縁部へ運ぶことにより、細胞の運動を増進するという新しい機能を持つことも明らかとなった。その際、コータクチンがアセチル化されているとKeap1との結合が弱くなるため、がん細胞の運動性が著しく低下することも判明したという。

今回の研究成果により、Keap1はこれまで知られていた酸化ストレス応答調節因子としての機能に加えて、コータクチンの細胞内局在を調節することにより細胞運動性を制御する因子として機能することが明らかになった。Keap1とコータクチンの相互作用の阻害は、がん細胞の浸潤や転移を抑えることを示唆するという。

また、コータクチンのアセチル化はKeap1との結合を弱めるため、コータクチン脱アセチル化酵素の阻害剤は、がん転移の治療薬になる可能性があり、今後はコータクチン脱アセチル化酵素を標的とした創薬開発が期待できるとしている。

 

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