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血球減少を伴う先天性疾患の新たな原因遺伝子を発見、病態解明と治療法開発へ-東北大

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2015年11月18日 AM06:00

無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症

東北大学は11月10日、手首をひねることが困難な先天性の骨疾患である橈尺骨癒合症と無巨核球性血小板減少症を合併する疾患の新しい原因遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野の新堀哲也准教授、青木洋子教授、小児病態学分野の笹原洋二准教授、宮城県立こども病院血液腫瘍科の今泉益栄科長、創生応用医学研究センター細胞増殖制御分野の中山啓子教授らの研究グループによるもの。同研究成果は11月12日付の「American Journal of Human Genetics」オンライン版に掲載されている。

無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症は、血小板を中心とした血球の減少と、前腕の2本の骨が癒合していることにより手首をひねることが困難である疾患。これまで世界で10家系ほどの報告しかなく、そのうち2家系で原因遺伝子HOXA11の変異が報告されていたが、この遺伝子に変異が同定されない患者が存在しており、別の原因遺伝子の存在が示唆されていた。

EVI1のミスセンス変異が、先天性疾患を引き起こすことを初めて明らかに

そこで同研究グループは新しい原因遺伝子を同定するため、HOXA11に変異が同定されなかった患者およびその健康な両親の全エクソーム解析を行い、新生突然変異を探索。その結果、患者において、白血病や大腸がん・卵巣がんなどで高発現となるがん原遺伝子である「EVI1」(エビワン)にミスセンス変異を同定したという。

さらに同疾患の患者2人についてもEVI1を調べたところ、1人目の患者の変異の近傍にミスセンス変異を同定。これらの変異は塩基多型(個人差)データベースには存在しておらず、機能解析実験におても変異を持ったタンパクは正常なタンパクと異なった性質を持っていたことから、疾患の原因と考えられたという。

先天性橈尺骨癒合症でがんになりやすいという報告はないものの、過去にEVI1遺伝子全体の欠失を持った人は血球減少を呈したが他の異常はなかったとの報告があることや、今回の3人の患者の変異がEVI1の特定のドメインに集中していることから、EVI1が正常な血球の維持に必要でありミスセンス変異においてもそれが障害されること、およびこのドメインは血球の増殖のみならず前腕の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。

今回の発見は、EVI1 の血液細胞や前腕の発生における役割について新たな知見を加えるもので、今後EVI1高発現のがんに対して、今回変異が集中していたドメインの機能を抑える薬剤を開発するなど、新たな治療法につながることが期待される。

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