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大鵬薬品 「TS-1」の第3相試験結果をASCOで発表

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2014年06月10日 PM03:00

転移・再発乳がんを対象としたTS-1第3相試験

大鵬薬品工業株式会社は6月3日、5月30日~6月3日に米シカゴで開催された第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、転移・再発乳がんを対象とした「SELECT BC試験」の結果を発表したと発表した。


画像はwikiメディアより引用

SELECT BC試験は、転移・再発乳がんに対する「タキサン系薬剤(Taxane)」と「ティーエスワン()」のランダム化比較試験。医師主導研究として、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターがん臨床研究支援事業が、大鵬薬品との委受託契約に基づいて実施した試験で、遠隔転移を有する進行・再発乳がんの一次療法例を対象に、TS-1と標準療法の1つであるTaxane療法を比較した第3相臨床試験である。

試験は日本国内で実施され、全国258施設の医療機関が参加。2006年10月から2010年7月の間に618例が登録された。

TS-1単剤一次化学療法として延命効果を立証

試験の結果、主要評価項目の全生存期間(OS)で、TS-1群は35.0カ月、Taxane群は37.2カ月となり、TS-1群のTaxane群に対する非劣性が示された。TS-1群で認められたグレード3以上の主な有害事象は、好中球減少6.8%、疲労3.3%、下痢2.6%、食欲不振2.6%で、全グレードで脱毛は4.9%であったと報告されている。

大鵬薬品工業では、SELECT BC試験を、転移・再発乳がんの治療目的は延命とQOLの改善であり、全生存期間が劣らなければ、一次化学療法の薬剤選択は奏効率ではなく、副作用やQOLを重視することが妥当とのコンセプトのもとで実施。同試験が、遠隔転移を有する進行・再発乳がん症例に対し、TS-1単剤で一次化学療法としての延命効果を証明した初のものとなったことを強調した。また、この良好な結果が、がん治療に従事する医療関係者および患者に大きく貢献するものとなるとの見方を示している。

TS-1は、フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤。吸収後、抗がん剤フルオロウラシルに変換される代謝拮抗物質のテガフール、体内でフルオロウラシルの分解を阻害するギメラシル、消化管におけるフルオロウラシルのリン酸化を阻害するオテラシルの3化合物から成る配合剤である。

胃がん治療薬として開発された薬剤で、1999年に承認を取得し、現在胃がんの標準治療薬となっている。日本国内では、ほかに結腸・直腸がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、手術不能または再発乳がん、膵がん、胆道がんの6つで追加効能承認を取得している。2014年5月現在、海外においては、胃がんを適応とし、アジアおよび欧州で販売されているという。(紫音 裕)

▼外部リンク

大鵬薬品工業株式会社 ニュースリリース
http://www.taiho.co.jp/corporation/news/2014/

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