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皮膚疾患につながるケラチノサイトの分化障害、微小環境の変化が影響-東邦大

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2018年03月30日 PM12:40

多元的なバリアで構築されている皮膚組織

東邦大学は3月27日、表皮を構成する細胞のひとつであるケラチノサイトが存在する微小環境の変化がケラチノサイトの重篤な分化障害を誘導し、バリア機構破綻による皮膚疾患を引き起こすことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部の中野裕康教授の研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に掲載されている。

外部環境と体内をへだてる上皮のひとつである表皮(皮膚)組織は、複数種類の細胞や細胞外成分の要素からなる多元的なバリアで構築されている。このバリア機構の破綻は、さまざまな疾患の原因になると考えられている。皮膚の難治性疾患の乾癬やアトピー性皮膚炎も、表皮バリア機構の破綻による疾患と考えられており、表皮の肥厚や角化の亢進などによって、皮膚の乾燥や組織破壊を招き、化学物質や細菌などの異物が侵入しやすくなることで、いっそうの悪化につながる。

これら疾患の原因の多くは不明だが、皮膚組織内に存在する免疫系細胞の働きが過剰になっていることが挙げられる。乾癬やアトピー性皮膚炎に対する治療薬として、免疫系細胞の分泌する腫瘍壊死因子(TNF)やインターロイキン(IL)-17Aの効果を中和する抗体が使用され、一定の効果が上がっているが、根本的な治療法は開発されていない。

IL-6やIL-17Aなどが存在する微小環境

今回、研究グループは、表皮細胞のひとつ「ケラチノサイト」の細胞死が亢進すると著明な表皮の分化障害が誘導され、表皮のバリア障害が引き起こされて皮膚疾患に繋がることを解明。ケラチノサイト細胞死の亢進は、TNFの効果を阻害するだけでは不十分であり、FasリガンドやTRAILの活性を阻害することも必要であることが示されたという。


画像はリリースより

また、ケラチノサイト細胞の分化障害の原因は、細胞死の亢進した表皮細胞自体にあるのではなく、細胞死の結果生じたIL-6やIL-17Aなどが存在する微小環境の影響によるものであることを明らかにした。

研究グループは、「今後、ケラチノサイトの細胞死のメカニズムや、ケラチノサイト微小環境の詳細な解析を通して、従来の、免疫系に対するアプローチとは異なった有効な治療法の開発に繋げていける可能性がある」と述べている。

 

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