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肺非結核性抗酸菌症の国内患者数、7年前の2.6倍に増加-AMEDと慶大

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2016年06月09日 AM11:30

抗菌薬による治療が難しく、疫学的実態が不明な肺NTM症

)は6月7日、国内における肺非結核性抗酸菌症(以下、)の罹患率が、7年前と比較して2.6倍と急激な勢いで上昇し、公衆衛生上、重要な感染症となっていると報告した。この報告は、慶應義塾大学医学部感染制御センターの長谷川直樹教授、医学部内科学(呼吸器)教室の南宮湖(ナムグン ホウ)助教らが、結核予防会、国立感染症研究所との共同研究によるもの。成果は、国際学術誌「Emerging Infectious Diseases」に5月17日付けでオンライン掲載されている。


画像はリリースより

結核菌・らい菌を除く抗酸菌の総称を非結核性抗酸菌(NTM)という。水や土などの環境中に存在する菌で、150種類以上発見されており、肺に感染することで慢性呼吸器感染症を引き起こす。

非結核性抗酸菌症と結核との大きな違いは、ヒトからヒトへ感染せず、病気の進行が緩やかであるにも関わらず、抗菌薬による治療が難しい点だ。結核の減少とは逆に、発症者が増えてきており、確実に有効な治療がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきている。しかし、2007年の全国調査以後、日本国内において疫学調査は実施されておらず、近年の肺NTM症の疫学的実態は不明であった。

肺結核に匹敵する罹患率、今後の対策が急務

そこで今回、日本呼吸器学会認定施設・関連施設(884施設)に、2014年1月から3月までの肺NTM症と結核の新規診断数を記入するアンケート調査を実施。その結果、肺NTM症の推定罹患率は14.7人/10万人年と算出され、2007年の全国調査と比較して約2.6倍に増加していることがわかり、公衆衛生上、重要な感染症であることが示されたという。特に肺NTM症の中で最も難治性の肺Mycobacterium abscessus症は、2007年の0.1人/10万人年から約5倍と大幅な増加を認めており、今後の対策が急務であると考えられる。

肺NTM症の患者数の急激な増加の要因は、医療従事者の間での認知度向上・高齢化・診断精度の向上・検診機会の増加などが考えられるが、明らかな理由は不明であり、今後の研究が待たれる。

結核は、治療によりその大多数は治癒するが、肺NTM症は現時点において、有効な治療はほとんどなく、有病率は結核よりもさらに高いと予想される。肺NTM症が、患者への負担に加え、社会に及ぼす影響は既に十分に高いと考えられ、有病率を含めた肺NTM症の詳細な実態把握、及び肺NTM症への更なる対策は今後の重要な課題である、と研究グループは報告している。

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