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デジタルヘルス・リテラシー質問票、eHLQ日本語版を作成-順大

読了時間:約 3分7秒
2025年12月12日 AM09:10

医療課題の解決策として期待されるデジタルヘルス、利用者のリテラシー把握が不可欠

順天堂大学は11月27日、デンマークで開発され、世界の20か国語以上に翻訳されているデジタルヘルス・リテラシー質問票「eHealth Literacy Questionnaire(eHLQ)」の日本語版を作成したと発表した。この研究は、同大保健医療学部診療放射線学科の森本ゆふ協力研究員、高橋哲也教授、代田浩之特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

デジタルヘルスは、安全で質の高い医療の提供になくてはならない技術だ。スマートフォンや各種デバイスの進歩は、健康状態を常時モニタリングすることを可能とし、近年は、オンライン診察やネットによる病院の予約システムが普及するなど、インターネットを介した医療提供の裾野は飛躍的に拡大している。一方、高齢化が進み、医療費の増大や医療資源の不足など、さまざまな課題に直面している日本社会では、これらの課題解決策という側面からも、デジタルヘルスに寄せられる期待は高まっている。人々に役立つデジタルヘルス・サービスの提供には、医療従事者やシステム開発者が、利用者の健康とデジタル技術に関する知識やスキル、ニーズなどを把握していることが重要である。

日本語版eHLQ作成、国内504人対象調査で信頼性と妥当性を確認

eHLQは健康に関する概念や用語の理解、デジタルサービスを積極的に活用する能力や意欲などに関する35問からなる質問票で、デジタル先進国であるデンマークで2018年に開発された。eHLQは世界20か国語以上の言語に翻訳されており、世界保健機構(WHO)が実施する、「非感染性疾患の予防と管理のための健康リテラシー育成」プロジェクトにも採用されている。今回、研究グループはデンマークのeHLQ開発チームの支援のもと、日本語版eHLQを作成。国内504人を対象に調査を実施し、計量心理学的解析で信頼性と妥当性を確認した。

自己評価による健康状態とeHLQスコアに関連性

さらに、eHLQのスコアを年齢、健康状態、デジタルヘルス利用状況などの要因別に比較した。65歳以上と未満のeHLQのスコアを比較した結果、実質的な差は小さかった。慢性疾患の有無によるeHLQスコアの比較でも、実質的な差は小さかった。健康状態の自己評価が良いグループは、悪いグループに比べ、eHLQのスコアが有意に高かった。週に一度以上デジタルヘルスを利用するグループは、そうでないグループと比較して、eHLQのスコアが有意に高かった。

高齢者デジタルヘルス・リテラシー、一定の水準にあると示唆

65歳以上と未満のeHLQのスコアの比較では、統計的に有意差がみられる項目もあったが、2つのグループの平均値の違いがどれくらい意味のある差なのかを示す指標である「効果量(Cohen’s d)」を確認したところ、いずれも0.5未満であり、実質的な差は小さいと考えられた。デジタル技術を用いる医療サービスの提供は、高齢者にとって利用に伴う困難が生じやすいことが懸念されていたが、同研究の結果から、高齢者のデジタルヘルス・リテラシーは一定の水準にあることが示唆された。これは、高齢者を対象としたデジタルヘルス・サービスの開発に大きな励みとなる。

既存のデジタルヘルス・サービス、高リテラシー者向けである可能性

慢性疾患の有無によるeHLQスコアの比較でも、効果量はいずれも0.5未満であり、全体として大きな差は見られなかった。一方、自己評価による健康状態で比較すると、7つのスケール全てで有意差が見られ、そのうち5つで効果量が0.5を超えていた。高齢者の多くは複数の慢性疾患を併存し、定期的に医療機関を受診している。慢性疾患の悪化を防ぐには、服薬や食事・運動などの自己管理が重要とされており、その支援ツールとしてデジタルヘルスの活用が期待される。その一方で、現在利用可能なデジタルヘルス・サービスは、デジタルヘルス・リテラシーが高いグループに適したサービスとなっている可能性が示唆された。これから利用する可能性のある人にも使いやすいサービスの提供に向けて、デジタルヘルス・リテラシーの状況を継続的に把握する調査が必要であると考えられる。

利用者とデジタルサービスをつなぐ最適な提供方法も、検証を進める

eHLQは、健康やデジタルに関する知識やスキルだけでなく、デジタル技術に対する期待や、サービス利用のモチベーションなど、幅広い項目で構成されている。今後もeHLQによる調査を継続し、利用者のニーズに適ったデジタルサービスの提供に繋げていく。また、デジタルシステムそのものだけでなく、利用者とデジタルサービスをつなぐ最適な提供方法についても、検証を進めていく。高齢化社会への移行は世界的なトレンドであることから、eHLQを用いた国際共同研究等を通じて、国際的に共有すべき課題についても明らかにしていく予定である、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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