既存治療では多くの高リスク患者がLDL-C目標に未到達
大阪医科薬科大学は11月27日、国際共同試験「BROADWAY試験」により高リスク心血管疾患患者におけるObicetrapibの有効性と安全性が確認されたと発表した。この研究は、同大医学部内科学Ⅲ教室(循環器センター)の斯波真理子(Mariko Harada-Shiba)特務教授らが参画した国際共同研究によるもの。研究成果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」にオンライン掲載されている。

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低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)の低下は、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防において最も確立された治療戦略の一つである。しかし、最大耐容量のスタチン療法やエゼチミブ、PCSK9阻害薬を併用しても、多くの高リスク患者でガイドライン推奨値(LDL-C<55mg/dL)に到達できていない。
Obicetrapibは高選択的コレステリルエステル転送タンパク(CETP)阻害薬であり、従来のCETP阻害薬とは異なり高い水溶性を有し、脂肪組織への蓄積が少ないことが特徴である。今回研究グループは、Obicetrapibの安全性と脂質低下効果を検証するため、多国籍二重盲検プラセボ対照試験(BROADWAY試験)を実施した。
高リスク2,530例を対象にObicetrapib投与、LDL-C低下効果と安全性を評価
BROADWAY試験では、動脈硬化性心血管疾患または家族性高コレステロール血症(HeFH)を有する2,530例を対象に、最大耐容量の脂質低下療法下でObicetrapib(10mg/日)またはプラセボを365日間投与し、LDL-C低下効果と安全性を評価した。
・対象者:平均年齢65歳、女性34%、HeFH患者17%、ASCVD患者89%
・治療薬:Obicetrapib 10mg/日またはプラセボ(2:1の割合で割付)
・主要評価項目:投与84日目のLDL-C変化率
LDL-Cが29.9%低下、半数以上がガイドライン推奨値を達成
結果、Obicetrapib群においてLDL-Cは29.9%低下したのに対し、プラセボ群では2.7%上昇となり、両群差は−32.6%ポイント(P<0.001)であった。半数以上(51%)の患者がLDL-C<55mg/dLに到達した。また、アポリポタンパクBは−18.9%、non-HDL-Cは−29.4%、Lp(a)は−33.5%と低下した。有害事象発現率は両群で同程度(Obicetrapib群59.7%、プラセボ群60.8%)であった。
また、Obicetrapib投与によって顕著な脂質低下効果が認められ、安全性にも大きな懸念は示されなかった。
経口脂質低下薬の新たな選択肢となる可能性、長期イベント抑制に期待
今回の研究は、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬に続く新たな経口脂質低下薬の可能性を示す重要な成果である。Obicetrapibは、既存治療で十分な効果が得られない患者に対して、補完的かつ経口投与可能な選択肢となることが期待される。
「現在、長期心血管アウトカム試験「PREVAIL試験(NCT05202509)」が進行中であり、臨床的イベント抑制効果の検証が注目される」と、研究グループは述べている。
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